ラベル ゴジラ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル ゴジラ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

「池田憲章のわくわく怪獣ランド」第7話

後ろ姿が絵になるいかす怪獣(やつ)!!

 仲間うちで、年に一回やっている“特撮ベスト10”の季節がまたやってきて、「カッコいいデザインの怪獣」というアンケートをみつめながら、いろいろな怪獣の勇姿を思い浮かべた。このベスト10は、ビデオを編集して2時間分のベスト10テープを作って、皆でお酒を飲みながらそれをみる、という酔狂企画で、いい加減に選ぶと、本当にカッコいいかどうかを映像でみられてしまう……こいつは悩んだ。
 そして、僕の結論は、やはりと言えばいいのか、ベスト1が“ゴジラ”であった。
 ゴジラのどこがすごいか。前からみてよし、斜め前がまたよし、横からみてよし、斜め後ろからみてまた抜群のカッコよさ、そして、後ろからみても長い尻尾と背びれがつける表情……とほとんど全角度、どこからみても絵になるのである。こんな怪獣は、世界でも類例がない!
 これは、なぜか。実は、アニメ雑誌の編集をした時、気づいたことなのだが、ロボット2体が対決しているシーンを描いてもらうと、一体のロボットの顔は、まずみえなくなってしまう。ところが、ゴジラは爬虫類なので、口は耳まで裂けてるし、目は顔の側面についている----かなり斜め後ろでも表情のある顔がみえるのだ(これは、実はウルトラマンも同じなのだ。“爬虫類みたいな顔”と言われるのもよくわかる)。さらに、ゴジラの場合、そびえたつ分厚い背びれと長い尾が表情をつけ加える。昔、イラストレーターの開田裕治さんが東宝のイベント用にゴジラのTシャツにイラストを描いたのだが、これも後ろ姿のゴジラで、背びれと少し振り向き加減の表情がすばらしいイラストだった。後ろ姿のほうが絵になってしまう怪獣----こんな渋い怪獣はそうはいない。
 ゴジラには、初代の幽鬼のように燃える闇の東京に立つ映像、パワフルな『キングコング対ゴジラ』のエネルギッシュな動き、放射能火炎を吐く際、光る背びれの超イメージ映像……と、世界の怪獣王のひとりと言われるのも無理はないのである。
 ♪親しき友と酒飲みながら、ワイワイ怪獣ベスト10をみる。また楽しからずや!!

初出 徳間書店『SFadventure1988年7月号】


『ゴジラ』の特撮シーンの魅力

 東京を放射能火炎で、紅蓮の炎に包んでいく大怪獣ゴジラ……その特撮シーンは、どうやって撮影されたのだろうか?
『ゴジラ』(54)の全カットは、868カットだが、特撮は263カットと、実に3分の1に達し、合成シーンも95カットの多さ----と、ここまで本編(人間の芝居部分)と特撮が入念にモンタージュされた映画は、日本初であった。

 本編の本多猪四郎監督と特撮パートを指揮する円谷英二技師が挑み、作り出した“ビジュアル・クライマックス”の秘密とプロセスをミニチュア撮影の工夫、そして、多彩な合成シーンのふたつを中心にして紹介してみたい。
『ゴジラ』を見ると、のちの東宝が得意にする大俯瞰の東京ミニチュアがないのに気づく。
 現在も「ゴジラ」映画の撮影に使われている東京・成城学園前の東宝砧スタジオのそれぞれ五百坪ある第八、第九ステージの完成が『ゴジラ』公開の翌月、昭和291954)年12月で、そのためもあるが、より演出的な狙いがそこに見えている。
 同封の絵コンテを見てもらうとわかるが、東京の芝浦海岸に上陸したゴジラは、田町駅前から京浜国道沿いに、札の辻、新橋、銀座、尾張町交差点から晴海通りへ進み、数寄屋橋、有楽町のガード、東京都庁、永田町の国会議事堂、平河町のTV塔、浅草、隅田川の勝鬨橋を南下と、東京の実在の町を何ポイントかにわけて、ミニチュア化、あるいは実景の夜景に炎を合成して視覚化して、ゴジラの東京襲撃シーンを架空ドキュメントのように作りあげた。
 有川貞昌キャメラマンは、さらに人間の視点を強調するため、地面すれすれにカメラを置き、ゴジラに襲われる人間の視線で特撮の映像にメリハリを作り出している。
 特撮班の渡辺明美術監督は、第四、第五ステージだけでなく、第六ステージの外壁をホリゾントにして、屋外のオープン特撮セットを作り、燃えるミニチュアの炎のフォルムと勢いをナチュラルに撮影している。『ゴジラ』の燃える町のパワフルな炎と自然なアオリ映像は、オープン撮影の成果であった。
『ゴジラ』のオープン特撮セットは、25セットで、翌年の『ゴジラの逆襲』(55)のオープン撮影セットの10セットと比べると、いかに多かったかわかるだろう。
 この火災シーンのためのオープン撮影セットは、のちにも『空の大怪獣ラドン』(56)のタンクローリー車が横転して燃えあがる福岡市街と『地球防衛軍』(57)のモゲラが襲う富士市炎上シーンでも使用され、効果をあげていた。
 建物の壊し方でも、高圧線は放射能火炎で溶かし(鉄塔は、蝋素材で作られ、ライトの熱で溶かしている)、松坂屋デパートは放射能火炎で燃やし、数寄屋橋は踏み抜き、日劇はしっぽで壊し、国会は突き崩し、TV塔はかみついて倒し、勝鬨橋は両手でひっくり返す、とすべて変えてあることに注意。のちのTV特撮のようにやたら建物は爆発しない。
『ゴジラ』の東京破壊のプロセスがいかに入念に考えられたか、よくわかるだろう。
 ゴジラは、50メートルの大きさのため、岸田九一郎照明監督は、パート・ライトを使って、夜間に一部だけライトに照らし出される照明設計を随所で使い、サスペンスを盛りあげた。炎を受けて全身がしっかりと浮かびあがるスペクタクル・シーンとパート・ライトのサスペンスの配合も、照明演出の冴えあってのことだ。
 ゴジラのぬいぐるみは、生ゴムのような特殊プラスチックで作ったため、その重量は百キロもあり、中に入った俳優の中島春雄や手塚勝巳の動きもままならなかった。初代ゴジラの異様な重量感は、ハイ・スピード撮影のためだけじゃなく、その重さのせいでもあった。
 そのため、派手に俊敏に動くシーンでは、例えば、しっぽだけ、下半身のだけのスーツ、手を入れて動かす上半身だけのギニョール・モデルが作られ、活用された。
 倉庫の天井を踏み抜く足や有楽町のガードを壊す足に逃げる人間を踏もうとする合成シーンの足が下半身スーツ。屋根を壊したり、日劇を壊すしっぽがしっぽのみのパーツ。
 大戸島の八幡山に現れるゴジラや遠景の燃える町並みの上に動くゴジラ、放射能火炎を吐く(蒸気状のスプレーで表現)ゴジラ、時計塔に吠えるゴジラ、TV塔をくわえるゴジラが上半身のギニョール・タイプである。
 自分が求めている映像は、どのような形をとった時、現実化、視覚化できるのか----円谷特撮の演出は、初のぬいぐるみ怪獣に挑んだ時、ほとんど完成に近い方法論を確立していたのである。
『ゴジラ』は、95カットもの合成シーンを持つが、大戸島の外観や破壊家屋を実感させるマットアート合成やゴジラの放射能火炎を描くアニメ合成、同じ夜の闇の中に逃げる人間と迫りくるゴジラを同居させる生合成、移動マスク合成、と多彩な合成テクニックを見せた。
 本多猪四郎監督の本編班(A班)、円谷英二指揮する特撮班(B班)と共に向山宏技師率いる合成班(C班)があって、向山技師はA班に立ち会い、必要な合成シーンのためにカメラ前に黒マスクを作って生合成の手配をしたり、本編のタイミングを計測して特撮班の撮影用データを記録したり、本編と特撮の演出意図と撮影データをつなぎ、合成シーンに仕上げて、両班をサイドから支え続けた。
 ミニチュア・セットも効果的なマットアート合成で広がりが生まれていて、例えば、高圧線を突破したゴジラ主観の道路の人が逃げるシーンの左側の屋根はマットアート、服部時計塔に近づくゴジラの右側の毛糸看板と銀座4丁目の電柱もマットアートだ。マットアートをナメることで、セットは一段奥へ入り、構図に広がりが出るのである。
『ゴジラの逆襲』でも、大阪城のゴジラとアンギラスの土塀越しのショットを塀のマットアートで表現している。『ゴジラ』と『ゴジラの逆襲』の広がりを出すマットアート合成は、特に効果があったと思う。
 大戸島の八幡山の稜線に現れるゴジラの合成シーンは、向山班がカメラ前に黒マスクを作り、本編班がロケ地の伊勢半島で撮影した。撮影所に戻った向山班は、フィルムの一部をT・P(テスト・ピース)として現像して、マスター・ポジを作り、特撮班のカメラのルーペ部分に差し込み、位置を合わせて山のミニチュアとギニョールのゴジラで同タイミングを図って撮影する。その本編と特撮のフィルムをマットアートで間を埋めて合成する----サイズが小さいので、特撮の粒子はどうして荒れてしまう、その両者のトーンをマットアートでなじませるわけだ。移動マスクを作らない分、デュープが少なく仕上がりがよくなる。生合成という職人的な合成の高級テクニックである。
 アニメ合成は、マンガ映画を参考にして、幸隆生、飯塚定雄が放射能火炎を作画し、背ビレが発光するアイデアがこの空前のキャラクターをビジュアルとして完成させた。
 山根博士や尾形、恵美子ら主人公たちは、ゴジラの東京襲撃と共に、画面に現れず、逃げまどい、殺されていく人々がまさに映画の主役に変貌していく。合成シーンが“今なお日本人の上におおいかぶさっている水爆の恐怖”というテーマに直結するサスペンスを高めたことは、特筆されていいと思う。
『ゴジラ』は、昭和29年度の日本映画技術賞特殊技術部門を受賞する。
「この映画に要求されている特殊技術は、極めて大規模であるにも拘らず、綿密な設計と慎重な計算の下に各種の技術を高度に駆使配列し、質量ともに充実した創造的画面を構成し、日本映画における技術の水準を高めるとともにその領域を一段と広げた功績は特に推賞に値する」
 候補4作品、投票の結果、『ゴジラ』17票、棄権1という圧倒的な評価である。

 特撮が本編を支え、本編がより特撮の効果を高める----自由闊達なモンタージュは、本多・円谷演出ならではのもので、この後もいくたの名シーンを東宝撮影の中に生むことになる。『ゴジラ』は、その不滅の出発点ともなる日本特撮の記念碑的な作品なのである。

初出 東宝「ゴジラ40周年記念スペシャルボックス」(「ゴジラ」「怪獣王ゴジラ」カップリングLDBOX)解説書 1991

日本特撮 A la carte(1991年夏)

見逃すな
ソルブレイン!!

 まるで『特捜最前線』(77)というストーリーのハードさでファンを驚かせ続けている『特救指令ソルブレイン』が、6月になって完全3部作の連続ストーリーを完成させた。前作のウインスペクター・チームをゲストに、NATOが開発した自由に誰にも変身できるスパイ・ロボット(堀田眞三というキャスティングが絶品!)が日本に潜入、回路が誤作動してしまった自爆装置を開発者に直してもらおうとしたり、秘密裏に破壊しようとするウインスペクターの非情さ、実はサイボーグだったという家族の写真で見せるロボコップもかくやの情感のたかまり……と、正直TVの前で手に汗握ってしまった。少女から堀田眞三への変身も、細かいカット割り、わずかのラバー処理で実にそれらしく、実は特殊メイクの原口智生氏と見ていて、「これなら特殊メイクはいらないですよ」と感心するばかり。東映特撮、恐ルベシ! 未見の人は、バンダイからオモチャ屋ルートで、この3部作が1本でビデオ化されているので、ぜひ御一見を。特撮ファン必見!!

『満月』と『ゴジラ〜』で
大忙しの大森一樹監督

 9月中旬松竹洋画系で公開される大森一樹脚本・監督の『満月』(原作:原田康子、主演:時任三郎、原田知世、ほか)の試写を見ることができた。
 300年前の江戸時代初期、北海道の松前藩で起こったアイヌ民族の反乱の調査に潜入した津軽藩の武士・杉坂小弥太は、松前藩からの脱出に失敗、2年間をアイヌの村落で隠れ暮らした。コタンの老婆が1年間の期限なら故郷へ戻れると、仲秋の名月の下、コタンの秘法であるまじないが行われるが、何と出現したのは、300年後の現代の北海道。知り合った高校の生物教師・野平まり(原田知世)の家に居候する小弥太だが、いつしかふたりは……というファンタスティック・ラブ・ストーリー。仲秋の名月から光が伸びていく合成は数カットあるが(合成は日本エフェクト・センター)、あまり合成に頼らないラブ・ストーリーのタッチが軽快で、原田知世、時任三郎が伸びやかな演技を繰り広げている。『ゴジラVSキングギドラ』クランク・イン直後の大森一樹監督に取材してみた。
「アメリカ映画の水準を、どこかクリアーしたい気分があって、この映画も『スプラッシュ』みたいな感じを狙った作品です。あまり合成は使う気はなくて、松竹側からも、こんな合成予算少なくていいんですか、と言われましたよ。ラストの月をよぎる城からの脱出シーンとかは狙ってますけどね。ああいう映画らしい開放感は必要ですから。原田君もあのシーンはおもしろかった、と言ってましたね」
 ふたりの演技について。
「小弥太役は、ずいぶん悩んだんですが、時任君はできあがったらぴったりでした。常に背筋を伸ばしていたり、演技ではなく、雰囲気で見せなきゃいけない難しい役をよくがんばってくれたと思う。原田君はどうしても『時をかける少女』のイメージがあるんだけど、新しいキャラクターを作ってくれたと思う。“いや、して”とかキスを求めるシーンもよかったし、ふたりのラブ・ストーリーの気持ちの揺れをしっかり演じてくれました」
 惹かれながら、1年後の別れが約束されているふたり、ファンタスティックな設定がふたりのラブ・ストーリータッチを際立たせてくれる訳で、日本映画には珍しいムードを生み出している。大森監督は、機会があればこういうファンタジーの要素を入れたラブ・ストーリーはこれからもやってみたいと語る。日本映画には、こういう特撮を前面に出さぬやり方のほうが実りが大きいかもしれない。
「映画は夢物語で、現実の中で起こる夢も含めて、現実の苦しさや切なさは、映画で見せるのは、もういいんじゃないか、という気がするんです。まりという娘も祖母と暮らしていて、あれが母親だと生っぽくなってしまう。月を見ておばあちゃんとふたりで月見するシーンも、ラストに撮ったんですけど、モラルとか“そういうことは、はしたないことですよ”と教えてくれるのはおばあちゃんで、こういう構図が物語を支えていく。映画の夢の語り方は、いろいろあると思いますね」
 特撮に頼らないファンタジーの開放感のある作品タッチを見ていただきたい。
 カラー・ページでも詳報を伝えている『ゴジラVSキングギドラ』(1214日東宝系公開)は、520日特撮クランク・イン、618日本編クランク・インで、順調に撮影が進んでいる。大森一樹監督はこう語る。
「前の『ゴジラVSビオランテ』は、はっきり狙った作品ですが、今回はいろいろな要素を入れ込んだ脚本にしてあります。前回の若狭のクライマックスが時間切れの感じがしていたので、今回はクライマックスの新宿都庁のラスト・バトルを最初に撮って、スタッフが疲れないうちにやろう、と川北さんとは話しました。ラッシュを見て、おもしろい仕上がりになっているし、ゴジラと戦う中川安奈にどれだけ感情移入できるか、すべての撮影はこれからです」
 新宿都庁の攻防戦シーンのラッシュは、伊福部昭音楽監督、田中友幸プロデューサーと一緒に見たそうで、音楽はすべて新作で、ラッシュを伊福部昭に見てもらってから作曲するそうで、東宝ファンにとっては、音楽面でも大いに期待できるだろう。
 川北紘一特技監督率いる特撮班は、新宿都庁周辺のゴジラ、メカギドラ攻防シーン、南洋の孤島を舞台にした恐竜・ゴジラザウルスの特撮プール&ジャングルのオープン撮影、福岡の市街地を襲うキングギドラ、札幌のゴジラ・アタックと、第9ステージに『ビオランテ』のような特撮フル・セットを作らず、各シーン、カットごとにセットを作りかえ、短いショットとカメラをクレーン、宙を走るゴンドラ、移動車、天井の照明用の二重から見おろしてと、江口憲一キャメラマンのアクティブな撮影がとても刺激的だ。
 キングギドラと航空自衛隊との空中戦も用意されていて、絵コンテを見せてもらったが、、多彩な視点が気持ちよく、特撮の“目で楽しむ”見せ場が実に多い作品になりそうである。操演スタッフは、ベテラン・松本光司技師の指揮の下、『鳥人戦隊ジェットマン』の操演スタッフも加わり、新しいキングギドラとメカニックの飛行イメージに挑戦している。
 特撮のメイン・スタッフは、江口憲一キャメラマン、斉藤薫照明監督、大沢哲三美術監督の『ガンヘッド』、『ゴジラVSビオランテ』スタッフに、合成撮影の桜井景一キャメラマン(『大空のサムライ』、TV版『日本沈没』)が加わり、夜間シーン中心だった『ビオランテ』の都市シーンとは違うアクティブなゴジラの特撮を作るべく、精力的な撮影が続いている。

初メガホンの原口智生の
『ミカドロイド』

 東宝ビデオのビデオ用映画シネ・パック第1弾として、118日に発売決定となった原口智生脚本・監督の『ミカドロイド』(製作:円谷映像・東宝ビデオ・東北新社)が完成、52日に初号試写が行われた。
 昭和20年の第二次世界大戦末期、本土決戦用に秘密開発された日本軍の人造人間ジンラ計画……。空襲で埋没した研究所の中で、人造人間は生き続けていた。45年の時を経て、東京の地下によみがえる人造人間。ふと地下迷宮に入り込んだ現代の男女ふたりが出会うものは……という、現代が忘れてきた悪夢がよみがえるという異色ホラー作品である。原口監督の指名で、『帝都物語』、『ウルトラQザ・ムービー 星の伝説』の絵コンテ・樋口真嗣が特技監督となり、東宝ビルトのオープンで撮影された東京空襲シーンの迫力(ワイド・レンズで煙のフォルムを変えるという細かさ!)、爆風を受けてミカドロイドの落下傘が開くというミニチュア特撮、デン・フィルムが手描き移動マスクで抜いた合成2カットと、入念に計算しぬいた特撮がドラマを盛りあげ、人間兵器に改造された青年たちのエモーショナルな情感をしっかり描きあげている。原口智生監督にその狙いを聞こう。
「今まで特殊メイクの仕事で知り合ったスタッフと徒党を組んでやりたかった映画です。僕が監督するので、特殊メイクの映画と思う人もいるようですが、それは全くなくて、長年、温めていた企画です。
 操演は亀甲船の根岸さん。岡崎の背から突き出すメカニック・アームはワイヤーワーク、建物の崩しは仕掛け、とオーソドックスな技術で充分おもしろい映像が撮れると確信できました。はやりやスタイルで撮るのではなくて、操演や技師のパートがいて絵が動くという実感があった。
 火薬や弾着効果も、手榴弾の爆発やミニチュアの爆破は太平特殊効果の久米功さん、銃撃戦のエフェクトと弾着はビッグショットの納富喜久男さんと、本来ありえない業界の双璧の方にやってもらい、そのメリハリが画面にいい効果を出していると思います。
 特撮の撮影は、東宝映像美術の桜井景一キャメラマン、照明は東映テレビの矢島信男組で、『仮面ライダーBLACK』、『鳥人戦隊ジェットマン』の林方谷照明監督とぜいたくな組み合わせで、シーン自体は多くないんですが、特撮映画らしいムードを少ないカット数で作りあげてくれました。
 樋口ちゃんとは相性が合いすぎて、今の技術でもおもしろい映像が作れることを実証したかった。だから、ふたりとも、特撮マニア的なショットは全然なくて、地味だけど入れることで本編をいかす特撮カットを狙ったつもりです」
 水野伸一美術監督は、人造人間の地下研究所をまるで『メトロポリス』、『ガス人間第一号』の鉄骨むき出しセットに作り出している(バックに換気用の巨大なプロペラがまわるなど、凝りに凝った本編セットである)。
 撮影、照明は、『ケルベロス/地獄の番犬』の間宮庸介キャメラマン、保坂芳美照明監督で、大半が地下駐車場、地下迷宮というダーク・トーンをクリアーにドラマ化している。
 オール・アフレコの撮影態勢もこういう造型主体の作品では、自然で効果音を極力排したストイックな音響演出が川井憲次作曲のふくらみのある情感のメロディーをいかしている。特撮アクション作品の、ひとつの解答と言える出来である。若い特撮ファンにぜひ見てもらいたい佳作であろう。
 ビデオ用のオリジナル映画は、各社企画が続いているが、忍者アクションものの山田風太郎原作の『くの一忍法帖』の撮影に、東北新社が入っている。製作協力:松竹芸能・京都映画という「必殺」シリーズや、テレビ東京系で絶好調の『鞍馬天狗』のスタッフで、脚本:石川孝人、監督:津島勲と時代劇を撮り続けてきたベテラン・スタッフだけに風太郎忍法帖をどう映像化するか。これはつい期待してしまう。
 女に変身する伊賀忍法“くの一化粧”、子供を腹から腹へ移す信濃忍法“やどかり”、女の体に乗り移る伊賀忍法“日影、月影”、男の体をセックス中にカサカサに精気を吸い取る真田“忍法筒涸らし”……というエロティックな風太郎忍法帖をどこまで映像化できるか----お手並み拝見である。
 カラー・ページで毎号紹介してきた『ゼイラム』(製作:ギャガ・コミュニケーションズ、監督:雨宮慶太)は、撮影を終了して、合成作業に6月下旬入っている。ある意味では、『ミカドロイド』と材料的に似ながら、演出が対極の作品で、『未来忍者』もかくやの合成、光線の嵐という作品に仕上がりそうだ。仕上げが遅れていて、未見なので詳細は控えておきたい。プロップや造型でこのジャンルをどこまでグレード・アップできるか、楽しみな作品である。
 ヒーロー・コミュニケーションズ企画で、バンダイ、丸紅、松竹ほか、台湾、香港の映画会社など、9社の協同出資によるのがスクリーミング・マッド・ジョージ&スティーブ・ワン監督の『ガイバー』で、817日松竹洋画系で公開される。
 宇宙人によって作られた生物兵器こそ人類であった、という原作ストーリーを、アメリカに舞台を移して映像化。マッド・ジョージの特殊メイクは、獣人兵であるゾアノイドをグロテスクに立体化。ユーモラスなギャグを散りばめるあたりが、いかにも両監督の資質だろう。
 ガイバーの逆回転も使用した変身シーンがすばらしいイメージで、ヒーロー・ファンは仰天するであろう。
 ただ、ゾアノイドの戦いとアクションが、あまりにカンフー一辺倒で、東映特撮アクションのスピード感をもう少し導入したほうが、特殊メイクとアクションもいきたのではないだろうか!? リアル版仮面ライダーの改造人間のアクションというのは、特撮ファンにとって長い間の夢であったが、特殊メイク+カンフーだけでは、少し物足りない。この肌触りに、シャープなアクション撮影が組み合わさった時、新しい時代がはじまるのだろう。特撮ファンは、この作品を見て、ぜひ考えてみてほしい。

初出 朝日ソノラマ『宇宙船』Vol.571991

SPFX HOT news(1989年秋)

この秋の特撮の話題はどうしても“ゴジラ”が中心になってしまう


ゴジラの登場シーン
息をのむ仕上がり

 8月から川北紘一特技監督率いる特撮先行で撮影に入った、東宝の『ゴジラVSビオランテ』(1215日公開、監督:大森一樹、特技監督:川北紘一)は、御殿場の三原山オープンの爆発シーン、昼間は、特撮大プールでゴジラVS自衛隊、スーパーXⅡの攻防戦シーン、日が傾いてからは第8ステージで芦ノ湖のセットでのビオランテ、ビオランテVSゴジラ、夜は、第10ステージの外に作ったオープンのミニチュア・セットで夜景ビル街シーンと89月、精力的に特撮シーンの撮影が進んだ。
 ヘリコプターをラジコンで飛ばしたり、プールのシーンでは火柱が吹きあがる爆発用の特殊装置と特撮に新しい味を出そうと、川北組の奮戦は続いている。
 夜景シーンが中心だった84年の『ゴジラ』(監督:橋本幸治、特技監督:中野昭慶)に比べて、昼間あり、水中シーンあり、霧の夕方、夜に、嵐と、『ゴジラVSビオランテ』ではさまざまな情景を出し、そのためにオープンセット撮影を縦横に駆使している。
 ゴジラの着ぐるみは、特集ページの写真を見てもらいたいが、キンゴジと初代ゴジラを二で割ったようなボディ・ラインで、白目の少ない黒眼がチャッチ・ライトにキラッ、キラッと光り、生物のタッチを色濃く出すキャラクターとなった。ゴジラファンにとっては、久々に満足すべきゴジラであろう。
 先日、芦ノ湖のビオランテ対ゴジラの攻防戦シーンのラッシュの一部を川北特技監督に見せてもらったのだが、空にクロスする探照灯、ビオランテの異様な触手攻撃、ゴジラの唸るしっぽに、メリハリをつけて放たれる放射能火炎と短いカット・ワークとゴジラの情感があふれ、息をのむ仕上がりであった。『ガンヘッド』(89/監督:原田眞人)で見せたダイナミックなキャメラ・ワークは、今回も健在で、江口憲一撮影監督、斉藤薫照明監督のディテールを浮かびあがらせる手腕は、さらにパワーアップして描かれていく。特撮班自ら大阪へ出向いて、撮影してきた大阪城ホールやビジネス街の合成シーンも1シーン、1シーン、カメラの中にフィルムのあたりをオープンで燃える炎の前に立つゴジラを撮りあげていった。
 10月に入ってからは、第2ステージに建てられた大阪のビジネス街での攻防戦、そして、第8ステージ500坪いっぱいに作られる若狭でのゴジラVS自衛隊の総力戦、ビオランテとの決戦シーンが撮影される予定である。
「ともかく、合成シーンが多いので頭が痛い。ゴジラのカッコよさとパワーを映像で存分に見せますよ」
と、川北特技監督は頼もしい。
 大森一樹監督の本編シーンも、ふんだんに自衛隊シーンがあり、芦ノ湖、大阪、御殿場とロケにも多人数のエキストラを使い、若い大森監督の見たゴジラの新しいタッチが次々と登場している。
 川北特技監督は、光線の合成も何種類ものイメージを考えているそうで、久々に娯楽性の高い怪獣映画が誕生しそうだ。特撮ファンに自信を持って勧められる新作である。1216日、劇場でぜひ御覧いただきたい。

完全娯楽作品
『ZIPANG』

 この11月中旬にシネマライズ渋谷で先行ロードショーされる『二十世紀少年読本』の林海象監督は、9月から新作劇場映画の撮影に入った。EXE製作、東宝で来年1月中旬に公開されるファンタスティック時代劇『ZIPANG』である。もう4年も前から彼があたためていた企画で、時代は戦国から江戸時代へ移ろうかという過渡期。七本の刀を自在に使い、悪には強く、弱い者にはやさしく、女にはめっぽう弱い快男士の武士・地獄極楽丸(髙嶋政宏)が主人公で、太古からもうひとつの日本として君臨してきた黄金の国“ジパング”の謎を追う服部半蔵率いる忍者軍団との大攻防戦となる。いずこからか現れるジパングの屈強の剣士四天王、さらに、無敵の王(平幹二朗)、女王の秘密とは……と、全編剣戟シーンとチャンバラの連続となる。合成をデン・フィルム・エフェクトが担当。『夢みるように眠りたい』、『二十世紀少年読本』に続いて林監督とは、3本目の木村威夫美術監督。木村氏は、10月現在、調布の大映スタジオで、ラストのクライマックスの攻防戦の舞台になるジパングの神殿を建設中。
「“黄金の国”といっても、連中にとって金は空気みたいな物。神殿も廃墟というか、らん熟の果てにたどりついた文明という崩れた、どこか溶けたようなイメージで考えてます。不死身の王も衣装がボロボロで、どこか歪んだ文明というか退廃のタッチを出したい。そこを時々サーッとカメラ前に金粉が散るとかね。仕掛けを入れ込んだおもしろいセットを作ろうと思っています」
と、木村氏は語ってくれた。
 910月は、沖縄から関東を中心にロケ撮影の連続で、10月中旬からセット撮影に入る。
 忍者軍団の殺陣も奇想天外(見てのお楽しみ!!)で、林監督自ら“チャンバラのおもしろさを全編に見せる”と語る娯楽作品だけに完成が待ち遠しい。撮影を特撮も軽快にこなす田村正毅キャメラマンが担当しているのも、特撮ファンには心強い限りだ。東宝の正月第2弾の作品である。
 学研・丹波企画の共同製作でヒットした『丹波哲郎の大霊界 死んだらどうなる』(89/監督:石田照)の続編が、9月から撮影中である。『丹波哲郎の大霊界2 死んだらおどろいた!!』(監督:服部光則)というタイトルにまず驚くが、妻殺しの濡れ衣を着せられて死刑になった主人公が死んでみたら、霊界の素晴らしさに驚き、真犯人にかえって感謝しに現世へ出てくると、真犯人にはウラミを言ってるように見え、彼は自殺、地獄へ落ちた彼を救おうとする主人公……と、丹波哲郎ならではの超ストーリーが展開。実相寺昭雄の助監督を長くつとめた服部光則監督が丹波のイメージ世界をどうさばきますか。コダイ・グループの池谷仙克美術監督が霊界のイメージを前作以上に繰り広げる。映画というより、丹波のイメージ・フィルムだが、ストーリーが前作よりある分、悪夢的な広がりもあり、唖然とする画面が楽しみである。松竹系で、これも1月に公開される予定である。

 いとうせいこう原作、市川準監督の『ノーライフキング』、小中和哉氏の兄である小中千秋脚本・音楽、若狭新一特殊メイク、石井てるよし監督のニュー・センチュチュリー・プロデュース製作の『TARO!』(桃太郎をイメージした中学生を主人公にするファンタスティック・ロック・アドベンチャー、10月完成予定)、相米慎二監督が幽霊の女の子をからめて描くラブ・コメディー『東京上空いらっしゃいませ』(ディレクターズ・カンパニー製作、来春公開予定)と特撮を使うSFタッチの作品は続々と待機中である。公開が決定次第、内容をもう少し詳しく触れてみたい。

初出 朝日ソノラマ『宇宙船』Vol.501989