東映テレビ映画テーマ曲集 作品解説

風小僧
[NET=現・テレビ朝日 昭和3459)年23日~1229]
 東映が初めてテレビ用のシリーズとして制作した作品。『笛吹童子』、『紅孔雀』といった少年向け痛快時代劇の延長線上にあり(原作も同じ北村寿夫)、風を自由に操る神風の術を使い、鳥や動物と話すこともできる“風小僧”が悪人たちと戦う波乱万丈のストーリー。当時、小学生だった目黒祐樹の主演ではじまり、14話以降、風小僧の師匠:疾風之介役で出演していた山城新伍にバットンタッチされたが、彼の人気も加わってさらに人気番組となった。

七色仮面
[NET=現・テレビ朝日 昭和3459)年63日~昭和3560630]
『月光仮面』の生みの親・川内康範が東映の依頼を受けて作り出した新ヒーロー“七色仮面”は、さまざまな人物に変装することができ、普段は名探偵“蘭光太郎”として活躍する。いわば、東映の劇場映画でのヒットシリーズ“七つの顔の男・多羅尾伴内”の仮面版といった内容。敵役も“コブラ仮面”、“キングローズ”、“レッドジャガー”、“スリーエース”など、奇怪な仮面怪人が登場して、秘宝の争奪戦を繰り広げた。主人公にからむ迷探偵“金有左門”のギャグメーカーぶりも楽しく、「解けない謎をサラリと解いて~♪」という主題歌は、子供たちの愛唱歌となった。劇場でも連続活劇として公開され、そのため35ミリで映画並みに撮影されて、その画面のクオリティーでも評判になった。主人公を波島進が演じ、第5部から千葉真一にバトンタッチ。その『新 七色仮面』(60/NET)が千葉のデビュー作である。

アラーの使者
[NET=現・テレビ朝日 昭和3560)年77日~1227]
『新 七色仮面』(60/NET)に続く、千葉真一主演のヒーロー・アクション。“アラーの神の使い”と名乗る不思議な人物が、“鳴海五郎”という青年に姿を変え、日本に登場。カバヤン王国(スポンサーの“カバヤ”から命名)の末裔であるココナツ殿下と娘のマミイを守って、謎の一味“紅とかげ団”と戦う。原作は川内康範で、アラーの使者のスタイルは、後年、彼が手がけた超能力ヒーローもの『レインボーマン』(72/NET)にも受け継がれている。

コロちゃんの冒険
[NET=現・テレビ朝日 昭和3459)年41日~617]
 東映のテレビ作品は、まず子供を中心として、家族みんなで楽しめるドラマ作りを目指し、『風小僧』(59/NET)のような時代劇、『七色仮面』(59/NET)に代表されるヒーロー・アクションだけでなく、いわゆる名作路線も取り入れていた。これは、その1本で、子熊の“コロちゃん”が、離ればなれになった親を探して旅をするうちにさまざまな人々と出会い、冒険を重ねていく、という動物ドラマ。のちに、犬を主人公にした同傾向のシリーズ『ロックのお手柄』も作られている。

白馬童子
[NET=現・テレビ朝日 昭和3560)年63日~92]
 俳優だけでなく、司会者、映画監督など、現在も幅広く活躍している山城新伍の出世作。『風小僧』(59/NET)の人気に応えて、同じ山城主演の後番組として登場した。白馬にまたがり、全身白ずくめ、獅子のたてがみのような髪をなびかせ破邪の剣“日輪丸”で、悪をバッタバッタとなぎ倒すヒーロー・白馬童子こと“葵太郎”の颯爽とした美剣士ぶりが鮮烈だった。また、東映京都撮影所のセットや技術をフルに活用し、テレビ時代劇のルーツの1本としても印象的な作品である。

ナショナルキッド
[NET=現・テレビ朝日 昭和3560)年84日~昭和3661)年427]
 日本のテレビドラマでは、初の本格的なSF特撮もの。家電メーカー・松下電器(ナショナル)がスポンサーだったことから、メカニックの部分が強調され、インカ金星人の円盤母船“スカウ”や海底魔王ネルコンのシーラカンス型潜水艦“ギルトール”、地下帝国のロケット船団など、ミニチュア特撮にも大がかりな予算がかけられた。新東宝映画の『スーパージャイアンツ』の特撮スタッフと東映チームの合同スタッフだった。アンドロメダからきたナショナルキッドに変身する青年探偵“旗竜作”と少年たちが主人公で、キッドの使うエロルヤ光線銃を型どった懐中電灯式のおもちゃが大人気だった。

新諸国物語 紅孔雀
[NET=現・テレビ朝日 昭和3661)年81日~昭和3762)年424]
 中村錦之助(現・萬屋錦之介)と東千代之介のコンビで、劇場用作品として大ヒットした時代活劇のテレビ版。福田蘭童と北村寿夫が再構成し、『笛吹童子』同様、独特のロマンに満ちた世界を創り出している。物語は、アステカの秘宝の隠し場所を示す“紅孔雀”をめぐって展開され、若き剣士“小四郎”、妖術師“信夫一角”とされこうべ党をはじめ、美女、剣豪、怪人が入り乱れ、波乱万丈のドラマで、子供たちの圧倒的な人気を得た。主題歌はもちろん映画でもおなじみのメロディーである。なお、小四郎を演じた沢村精四郎は、当時の東映の若き時代劇ヒーローとして活躍。ほかに、『白鳥の騎士』(62/NET)などの主演作がある。

鉄道公安36
[NET=現・テレビ朝日 昭和3762)年67日~昭和4267)年42]
 “JNR”と略称される国鉄の列車は、1日のべ140万キロを走るといわれるが、鉄道公安官はこれに乗り、全国のすみずみに及ぶ鉄路の陰で、旅客と荷物の安全、犯罪防止に活躍している。国鉄の全面協力を得て、全国のオール・ロケで撮られたこの作品は、“鉄道公安官”という新しいキャラクターの魅力が光り、5年ものロング・ランとなった。主役の私服公安官36号は、ベテランの北村公安官(影山泉)、若くて明るい宮本公安官(梶健司)で、のちに、亀石征一郎や千葉真一もレギュラー化した。社会派ドラマ重視で、列車ものならではの風物と機動力が見せ場となった。36号というナンバーは、サブロクのカブが縁起がいい、というのでつけたといわれている。脚本で小山内美江子、監督で田中秀夫、畠山豊彦、今村農夫也、と若手が活躍したシリーズでもあった。

特別機動捜査隊
[NET=現・テレビ朝日 昭和3661103日~昭和5277)年330]
 TBSの『七人の刑事』(61/104日放映開始)と同時期にスタートした刑事ドラマの古典ともいえる作品。立石主任(波島進)を中心とする刑事たちの地道な捜査活動によって浮かびあがる市民社会の哀感をテーマにすえ、派手なアクションではなく、犯人の内面をじっくり描くことが主眼であった。記念すべき国産初の1時間連続ドラマであり、15年半、801本におよぶ放送という大記録をうち立てた。その間にレギュラーメンバーも立石班だけでなく、藤島(中山昭二)班、三船(青木義朗)班、高倉(里見浩太郎)班、矢崎(亀石征一郎)班、日高(葉山良二)班と増え、テーマ音楽も小林亜星、ボブ佐久間らにリレーされている。

忍びの者
[NET=現・テレビ朝日 昭和3964)年724日~昭和4065)年730]
 天下の大泥棒“石川五右衛門”が実は、伊賀忍者であった、という奇抜な着想と、従来の荒唐無稽なイメージを排して、忍者を諜報・謀略活動のエキスパートというリアルな視点でとらえ、話題となった村山知義のベストセラー小説のドラマ化。脚本:結束信二、監督:河野寿一という、のちの「新選組」シリーズのコンビが担当し、五右衛門役の品川隆二の熱演を得て、忍者の非情な世界を迫力たっぷりに描き出した。のちに、大映が市川雷蔵主演でシリーズ化した、その先駆をなす時代劇ドラマの傑作の1本。京都テレビプロの第1回作品である。

新選組血風録
[NET=現・テレビ朝日 昭和4065)年711日~昭和4166)年12]
 司馬遼太郎の同名のオムニバス小説をドラマ化したもので、従来とは異なり近藤勇ではなく、副長・土方歳三にスポットをあてた点や、新選組を単なる暗殺集団ではなく、武士としての誠に殉じた男たちの群像として描いた点がユニーク。脚本:結束信二、監督:河野寿一、佐々木康による細やかなキャラクター作りと市井の描写、そして、土方を演じた栗塚旭をはじめとする、当時、無名の俳優たちの熱演、好演に支えられ、今なおテレビにおける「新選組もの」の傑作と評価されている。もちろん、渡辺岳夫の意欲的な音楽設計も大きな魅力であり、それはのちの『燃えよ剣』(70/NET)にも受け継がれていったのである。

くらやみ五段
[NET=現・テレビ朝日 昭和4065)年97日~昭和416631]
 柔道を取り入れた現代アクションのシリーズで、原作は寺田ヒロオのマンガ。主人公“倉見達也(千葉真一)”は、事故で失明しながらも、持ち前の明るさと柔道五段の腕前を武器に、数々の苦難を切り抜けていく。もちろん、千葉真一がめいっぱいアクションを披露、小林幸子が子役として“マツゲ”を演じている。また、この作品は、『空手三四郎』(65/NET)、『アタック拳』(66/NET)とともに、スポーツ三部作を構成するもの。

素浪人月影兵庫
[NET=現・テレビ朝日 昭和4065)年1019日~昭和4368)年1228]
 十剣無統派の剣の使い手“素浪人月影兵庫(近衛十四郎)”と曲がったことは大キライの旅ガラス“焼津の半次(品川隆二)”は、ふたり連れで宿場から宿場へと気ままな旅を続けていく。旅する中で、いろいろな苦難に巻き込まれて困っている人を助けたり、悪い侍やヤクザを叩き伏せていく明朗時代劇テレビシリーズの傑作。映画の柳生十兵衛役で知られていた近衛十四郎は、この兵庫役で三枚目ぶりと怒ると鬼より怖い絶妙の名演を見せ、品川隆二とのコンビは茶の間をわかせた。ふたりは、それぞれにニガ手があって、兵庫は猫、半次はクモを見ると、スタコラ逃げてしまうのも愉快だった。近衛の殺陣はダイナミックで、最後の戦いがいつも楽しみであった。「焼津の!」、「ダンナァ」というふたりの軽妙なセリフがともかく楽しい。原作は南條範夫の剣豪小説。

空手三四郎
[NET=現・テレビ朝日 昭和4065)年93日~昭和4166)年225]
時代は大正時代。沖縄出身の商船大学生の三四郎(亀石征一郎)は、沖縄空手の使い手であった。大正時代をベースに、柔道ではなく、空手のアクションを主眼にした異色作。最終回が関東大震災の91日で、今は悪虐非道の人となった師匠と対決する三四郎。地震の中、三四郎は勝つが元師匠のトドメをさせない……その中で建物が崩れて、師匠は下敷きになる、というクライマックス。商船大学が協力して、帆船での訓練シーンなども存分に描かれた。脚本は、七条門、元持恵美、監督は、松島稔、今村農夫ほか。

スパイキャッチャーJ3
[NET=現・テレビ朝日 昭和4065)年107日~昭和4166)年331]
 特撮を取り入れた少年向けのアクション・ドラマで、原作は都筑道夫。“TULIP(チューリップ)”と呼ばれる秘密警察組織の日本支部の腕利き“J3”こと壇俊介(川津祐介)を主人公に、国際的な謀略グループ“TIGER(タイガー)”と戦うスパイキャッチャーたちの戦いを描いた。当時としては、シャレたムードの作品である。J3の愛車コルベット・スティングレイがエア噴射で空を飛ぶシーンなど、特撮シーンも効果的に使われていた。日本支部長J1役で丹波哲郎、クールなJ2役で江原真二郎が共演。これは、東映東京制作所の第1回作品である。

丸出だめ夫
[日本テレビ 昭和4166)年37日~昭和4368)年226]
『週刊少年マガジン』(講談社刊)に連載された森田拳次の同名マンガをドラマ化。子供向けギャグ番組の先駆けといってよく、“だめ夫”役の保積ぺぺは、一躍人気者になった。物語は、町の発明家である父親“丸出はげ照(十朱久雄)”が息子のだめ夫の母親代わりとして作ったオンボロ・ロボット“ボロット”とだめ夫の友情を中心としたほのぼのとしたもの。このボロットも評判で、ボロット型のコイン入れなどは、当時の子供たちの必携アイテムであった。

忍者ハットリくん
[NET=現・テレビ朝日 昭和4166)年47日~928]
 現在もアニメ版が放送されている藤子不二雄の原作を実写ドラマ化したもので、主人公の少年忍者“ハットリくん”の顔を、何と仮面で表現している点がユニーク。怒った時や困った時など、いくつもの仮面を用意して、時にはアニメも使って、それぞれの表情を出していた。伊賀の山奥から武者修行のために都会へ出てきたハットリくんが、普通のサラリーマン家庭に居候し、巻き起こす珍騒動が描かれる。『ドラえもん』などとも共通する藤子マンガのペーソスやカルチャー・ギャップのおもしろさがよく表現されていた。時代劇を多く制作していた京都テレビプロの作品である。

アタック拳
[NET=現・テレビ朝日 昭和4166)年102日~昭和4267)年11]
 川崎のぼる原作の異色アクション。何が異色かというと、主人公“安宅拳太郎(高島英志郎)”は、バスを改造した移動レストラン“アタック軒”を営む一方、秘密諜報員“00YY=アタック拳”となり、仲間の戸川隆吉(伊達正三郎)とともにスーパーカーで出勤。怪人・仮面男爵(江見俊太郎)の陰謀に立ち向かうのである。

銭形平次
[フジテレビ 昭和4166)年54日~昭和5984)年44]
 神田明神下の岡っ引き“平次”と、その恋女房“お静”、子分の“八五郎”、そして、ライバル“箕輪の万七親分”らが活躍する野村胡堂の原作は、過去に何度も映像化されてきたが、映画では大映の長谷川一夫主演のもの、そして、テレビでは、この大川橋蔵主演によるシリーズが双璧であろう。特に、橋蔵の甘いマスクはお茶の間を魅了し、投げ銭と鋭い推理で悪に立ち向かう平次の名は、彼の代名詞ともなった。

悪魔くん
[NET=現・テレビ朝日 昭和4166)年106日~昭和4267)年330]
『ゲゲゲの鬼太郎』をはじめ、日本の怪奇マンガ」のジャンルに独自の地位をきづいた水木しげるの原作をもとに、東映の特撮技術を駆使して作られた異色の妖怪ドラマ。“悪魔くん”とあだ名されるオカルト好きの少年“山田真吾(金子光伸)”が魔法陣と「エロイム、エッサイム」の呪文で呼び出した悪魔“メフィスト(兄・吉田義夫、弟・潮健児)”の助けを借り、さまざまな妖怪と戦う。怪獣ブームの影響から“ペロリゴン”や“大海魔”といった巨大妖怪も登場するが、そのほかにも“水妖怪”や首人形の“マネキン妖怪”“ガンマー”といったユニークな妖怪たちが次々と登場し、子供たちを震えあがらせ、妖怪ブームを巻き起こした作品。悪役専門のベテラン・吉田義夫がチョコレート好きで、ダンディーなメフィスト役を好演していたのも印象的である。

俺は用心棒
[NET=現・テレビ朝日 昭和4267)年43日~925]
 新選組“土方歳三”を演じて人気を得た栗塚旭主演の時代劇。名前も生まれもわからない浪人(栗塚)を中心に、沖田総司(島田順司)や渡世人・新太(中野誠也)、山崎烝(西田良)、そして、浪人の友人・品田万平(左右田一平)ら、虚実取り混ぜた人物たちが幕末動乱を背景にさまざまな事件に関わりあう。そこで浮き彫りにされる庶民の哀歓がテーマであり、脚本:結束信二、監督:河野寿一というおなじみのコンビによる異色シリーズとして人気を呼び、以降、『待っていた用心棒』(68/以下、すべてNET)、『帰ってきた用心棒』(68)、『新・俺は用心棒』(69)、『天を斬る』(69)と、シリーズ化された。

キャプテンウルトラ
[TBS 昭和4267)年416日~昭和924]
 東映が初めてTBSと組んで制作したSFドラマで、円谷プロの「ウルトラ」シリーズと同じ時間枠で放送された。宇宙の英雄“キャプテンウルトラ(中田博久)”がキケロ星人“ジョー(小林念侍)”、ロボットの“ハック”をおともに、“バンデル星人”の太陽系征服の野望に立ち向かう、といったストーリーで、毎回、登場する怪獣やメカのユニークなデザイン、キャプテンたちが乗る宇宙船“シュピーゲル号”のスマートさ、そして、ウルトラとともに戦う“アカネ隊員”を演じた城野ゆきの美しさなどが子供たちの話題の的であった。音楽を担当しているのは、今やシンセサイザーの分野で世界的に有名な冨田勲。『ジャングル大帝』(65/フジテレビ)、『マイティジャック』(68/フジテレビ)と並んで、スケール豊かなメロディーを聴かせている。

ジャイアントロボ
[NET=現・テレビ朝日 昭和4267)年1011日~昭和4368)年41]
 巨大なロボットと少年の友情を描いた、といえば、『鉄人28号』などが思い浮かぶが、これは同じ横山光輝の原作を本格的な特撮を駆使して、実写ドラマ化したもの。宇宙人“ギロチン帝王”の率いる“BF団”と世界の平和を守る秘密組織“ユニコーン”の対決を軸に、巨大ロボット同士の肉弾戦をはじめ、スパイ・アクション、SF、ホラーなど、さまざまな要素を組み合わせ、東映独自のカラーを打ち出している。BF団の幹部で、安藤光男(ドクトル・オーヴァ)、室田日出男(ブラックダイヤ)、丹羽又三郎(スパイダー)、三重垣恒二(レッドコブラ)といった名脇役が出演。ペコちゃんのようなふっくらほっぺのU6役の桑原友美や主人公・草間大作少年役の金子光伸の愛らしさも忘れられない。

仮面の忍者 赤影
[関西テレビ 昭和4267)年45日~昭和4368)年327]
『伊賀の影丸』などで知られる横山光輝の原作マンガをドラマ化した特撮時代劇。正統派忍者ものともいうべき第1部「金目教編」、ユニークな忍者やメカが登場するSFチックな第2部「卍党編」、怪獣シリーズの第3部「根来編」、第4部「魔風編」と続き、いずれも赤影(坂口祐三郎)、青影(金子吉延)、白影(牧冬吉)のトリオが悪の忍者群と対決する、というストーリー。織田信長や竹中半兵衛といった歴史上の人物も登場するが、巨大なからくり人形(ロボット)である“金目像”や円盤型の万能戦艦“大まんじ”、あるいは、“ガバリ”や“ドグマ”といった巨大な怪獣たちが暴れまわる画面は、今見ても仰天するような破天荒なイメージにあふれている。

忍者ハットリくん+忍者怪獣ジッポウ
[NET=現・テレビ朝日 昭和4267)年83日~昭和4368)年125]
『忍者ハットリくん』(66/NET)の姉妹編的な内容で、忍術プラス怪獣のおもしろさを狙ってカメのような姿の宇宙怪獣“ジッポウ”がレギュラーに加わった。今回は、東京撮影所で制作され、より現代的な設定が取り入れられている。ハットリくんが居候するフジノ家の長女役で、松坂慶子が出演していたのは有名だが、主題歌を歌う前川陽子もCMソングやアニメのテーマ曲を数多く歌っており、そのメリハリの効いた歌声は、誰でも聞き覚えがあるはず。

一匹狼(ローンウルフ)
[日本テレビ 昭和4267)年1017日~昭和4368)年79]
 天知茂主演による、東映お得意のハードボイルド・アクション。主人公・響は、元警視庁の敏腕刑事。ある日、自分の妻が見知らぬ男ともみあっているのを目撃。拳銃が暴発し、傷ついた妻にかけ寄った彼の頭上に拳銃の台尻がふってくる。気がついた時、彼の前から妻も謎の男も、そして、拳銃も消えていた。響は、“一匹狼”となって行方不明になった妻と事件の真相を捜しはじめる----という発端で、彼がその途中で出会うさまざまな事件や人々を通じて、都会や現代に生きる人間の孤独を浮き彫りにしていく。推理作家・都筑道夫と深作欣二、佐藤純彌の3人が原案・構成を担当した。

キイハンター
[TBS 昭和4368)年46日~昭和4873)年41]
 土曜夜9時という時間帯に、お茶の間を釘づけにした、国際感覚あふれるハードボイルド・アクションの傑作。国際警察特別室に所属する5人のメンバー、黒木(丹波哲郎)、啓子(野際陽子)、風間(千葉真一)、島(谷隼人)、ユミ(大川栄子)が活躍するストーリーは、ベトナム戦争や中東動乱など、60年代の国際情勢や世相を反映したアクチュアルなものから、ヤクザ映画のパロディ、本格ミステリー、ホラーなど、バラエティに富み、当時としては、斬新なファッション感覚やスピーディーなドラマ作りが評判を呼んだ。アクション俳優としての千葉真一の人気を不動のものにしたのをはじめ、のちに、『Gメン’75』(75/TBS)などのシリーズに発展する基礎となった作品。

河童の三平 妖怪大作戦
[NET=現・テレビ朝日 昭和4368)年104日~昭和4469)年328]
『悪魔くん』(66/NET)に続く、水木しげる原作の特撮怪奇ドラマ。河童の国に迷い込んだ三平少年(金子吉延)がカン子(松井八知栄)を助けたことから河童の妖力を授けられる。しかし、それが大妖怪“物の怪”の怒りを買い、三平の母は、どこかへ連れ去られてしまった。三平は、カン子とお付きの六兵衛(牧冬吉)の協力を得て、母親を捜して旅へ----。その途上で、さまざまな妖怪たちと出会う、というのがストーリーの骨子。三平たちの監視役である半妖怪“いたち男”役で潮健児も出演している。なお、カン子役の松井八知栄は、現在、プロブウラーとして活躍中。

大奥
[関西テレビ 昭和4368)年46日~昭和4469)年329]
 東映テレビの女性路線時代劇の第1弾で、江戸城の大奥を舞台に、将軍をめぐって繰り広げられる女たちの愛と憎しみ、嫉妬を、ドラマチックに描いた1時間ドラマで、土曜夜10時半という遅い時間帯ながら、主婦層の心をつかんで大ヒットとなった。3代将軍・家光(中山仁)に見染められて、大奥へ召された町娘・お楽の方(橘ますみ)は、将軍の子を身ごもったがために、春日局(三益愛子)をはじめとする大奥の先輩たちにいじめ抜かれていく。岸田今日子の「……でございます」というナレーションが王朝もののイメージすら生み、女性の生々しいぶつかり合いは、女性ドラマとしても新しい形を生んだといえる。

旅がらすくれないお仙
[NET=現・テレビ朝日 昭和4368)年106日~昭和4469)年928]
『琴姫七変化』(60/読売テレビ)や『めくらのお市』(71/日本テレビ)など、多くのテレビ時代劇に主演している松山容子を起用した異色の股旅ドラマ。三味線のばちに鎖を仕込み、親を殺した仇を追って、旅を続ける美女・お仙とその気っぷにほれ込んだ、これまた元気のいい女渡世人・かみなりお銀(大信田礼子)のコンビが、行く先々で悪を退治していく、という痛快娯楽時代劇である。お仙が男の胸毛が苦手という設定は、『月影兵庫』(65/NET)の裏返しであろう。

怪盗ラレロ
[日本テレビ 昭和4368)年107日~昭和4469)年324]
『週刊少年マガジン』(講談社刊)に連載された加納一朗の小説をドラマ化した、少年向けギャグドラマ。宇宙の彼方にあるマラリア星からやってきた“怪盗ラレロ”は、「ブンドラー!」のかけ声とともに、どんなものでも瞬間移動の能力で盗み出すことができる。東京の下町に現れたラレロは、健太郎少年たちと仲良くなり、とんちんかんな騒動を巻き起こすことになるのだが……。人気漫才コンビ“青空はるお・あきお”がラレロと彼を追いかけるガンコ者の刑事“ポポポ”役で出演。東映ならではの特撮プラス下町感覚あふれるドタバタ・コメディーで、ラレロが変な日本語を話すのが愉快だった。

プレイガール
[東京12チャンネル=現・テレビ東京 昭和4469)年47日~昭和4974)年930]
 女性だけの保険調査員グループを主役にしたお色気アクション。“オネエ”こと沢たまきを中心に、緑魔子、応蘭芳、桑原幸子、真理明美、さらには、八代万智子、浜かおる、范文雀、大信田礼子、西尾三枝子、渡辺やよい、宮園純子ら昭和40年代を代表する東映の美人女優たちが続々とレギュラー出演し、パンチラも何のその、超ミニや水着姿で悪人をなぎ倒し、男性視聴者たちの目を楽しませた。当然、『ハレンチ学園』(70/東京12チャンネル)などと並んで、PTAから非難されたワースト番組の代表ともなった。続編として、『プレイガールQ』(74/以下、すべて東京12チャンネル)、姉妹編に、『ザ・スーパーガール』(79)、『ミラクルガール』(80)がある。

天を斬る
[NET=現・テレビ朝日 昭和4469)年106日~昭和4570)年320]
 動乱の幕末に京都を舞台に、浪士取り締まりの密命を受けた3人の男たちが、勤皇も佐幕もなく、非道をなす者を斬っていくハードボイルド・タッチの時代劇。主役の3人は、江戸の元講武所頭取・牟礼重蔵(栗塚旭)、京都西町奉行所与力・権田半兵衛(左右田一平)、京都東町奉行所与力・桜井四郎(島田順司)。3人が戦うのは、浪士くずれの御用盗一味から武器密輸商、非道の同心……と、バラエティにあふれ、秘密捜査員もの香りもあり、脚本:結束信二、監督:河野寿一コンビの作品の中でも異色作の感があった。

妖術武芸帳
[TBS 昭和4469)年316日~68]
 円谷プロの『怪奇大作戦』(68/TBS)の後を受けて放送された特撮時代劇。江戸時代、日本を支配下におさめようとする婆羅門の妖術師“昆砂道人”と神変抜刀流の使い手“鬼堂誠之介”の対決を描いたもので、誠之介役の佐々木功は、これが初の主演作品であった。ほかに、幕府の黒幕的な存在である香柱(こうたき)老人に月形龍之介、昆砂道人に原健策と、東映時代劇のベテランを配し、『隠密剣士』(62/TBS)や『仮面の忍者 赤影』(67/関西テレビ)を手がけた伊上勝のオリジナル脚本によって、異色の伝奇チャンバラシリーズを目指した。

柔道一直線
[TBS 昭和44年(69)年622日~昭和4671)年44]
『巨人の星』などと並んで、スポ根ブームの原動力になった柔道マンガ(原作:梶原一騎、画:永島慎二)をドラマ化したもの。外人柔道家に敗れて死んだ父親に代わって、一流の柔道家になろうと、努力する中学生・一条直也に桜木健一、彼を厳しく鍛える“鬼車”こと車周作に高松英郎が扮し、特撮やトランポリンを使った柔道アクションや直也の前に立ちふさがるライバルたちのキャラクター性を前面に押し出した、劇画チックな作品に仕上がっている。直也のガールフレンド・ミキ役の吉沢京子をはじめ、佐々木剛、真山譲二、近藤正臣といった若手や直也の母親役を好演した青木和子、先生役の牧冬吉、岸田森ら脇役陣も充実。直也の人間的成長を描いた青春ドラマとしても印象深い名作である。

大坂城の女
[関西テレビ 昭和4570)年13日~926]
『大奥』(68/関西テレビ)に続く、東映の女性路線時代劇の第2弾で、今回は、大坂城をめぐって、そこに繰り広げられる女性の悲劇と、つかの間の喜び、悲恋を描いた物語で、壮大な大坂城が築かれるに至る秘話から大坂城落城の千姫の物語までを存分に描いていく。監督は、『大奥』でも手腕を発揮した倉田準二。大坂城を秀吉に作らせるきっかけになる京極家の息女・竜子(藤純子)から秀吉(進藤英太郎)の妹・朝日姫(桜町弘子)、琉球の玉那姫(十朱幸代)と、オールスター・キャストのように女優が登場し、豊臣家と徳川家との戦いと政略に巻き込まれていく運命を見ごたえたっぷりに描き出した。

燃えよ剣
[NET=現・テレビ朝日 昭和4570)年41日~923]
『新選組血風録』(65/NET)とほぼ同じスタッフ、キャストによって制作されたシリーズで、やはり、司馬遼太郎が土方歳三の生涯を描いた同名小説にもとづいている。栗塚旭(土方)、島田順司(沖田総司)、舟橋元(近藤勇)、中野誠也(山崎烝)、左右田一平(裏通り先生)といったレギュラー陣は、これ以上は考えられない、といっていいほどの適役で、今も根強い人気を保っているが、チェンバロを使った渡辺岳夫によるメイン・テーマも忘れがたい名曲である。

徳川おんな絵巻
[関西テレビ 昭和4570)年103日~昭和4671)年925]
 女性向け時代劇メロドラマとして大ヒットした『大奥』(68/関西テレビ)の姉妹編的なオムニバス・シリーズ。徳川将軍家を中心とした武士社会の中で生きる女性たちの哀歓を、浅丘ルリ子、山本陽子、城野ゆきらオールスター・キャストで描いたもので、夜10時半からの放送ということで、ソフトタッチのエロチシズム、大奥内部の権力闘争、幕府中枢の政治的かけひきなどをからませ、東映ならではの絢爛たる女性ドラマを繰り広げている。

遠山の金さん捕物帳
[NET=現・テレビ朝日 昭和4570)年712日~昭和4873)年930]
 背中に鮮やかな桜吹雪の刺青を彫りつけた遊び人“金さん”こと、南町奉行・遠山金四郎が大江戸の悪を懲らしめる痛快時代劇のきわめつけ。主演は中村梅之助で、人情に厚く、粋でいなせな江戸っ子奉行を味わい深い演技で表現し、3年におよぶロングランのヒット作とした。『伝七捕物帳』(73/日本テレビ)と並ぶ、テレビにおける梅之助の代表作といえる。原作は陣出達朗。共演には、柳沢真一、水原麻紀らがレギュラー出演していた。

刑事くん
[TBS 昭和4671)年96日~昭和5176)年1129]
『柔道一直線』(69/TBS)で、人気者となった桜木健一主演による若者向けの刑事ドラマ。父を殺した犯人を自分の手で逮捕しようと、自ら父の跡を継いで刑事となった“三神徹男”は、新米ゆえに失敗を重ねながらもひたむきに捜査にうち込む。青春ドラマ、ホームドラマの要素とアクションを無理なく結びつけ、友情や人情、そして、根性をテーマに、はつらつとした若者像をストレートに描いて人気を呼んだ。桜木主演のシリーズは全4作となり、第5部で星正人にバトンタッチされている。署長役に名古屋章、母親役に風見章子、同僚役に仲雅美、三浦友和、中山麻里、宮内洋といったキャスティング。


 こうして、東映のテレビ映画を思い返すと、ほとんど見たことがあるのでおそれいるが、1本、1本が違う愛情を感じる作品ばかりだ。
 のん気なムードとそのダイナミックな近衛十四郎の殺陣で魅せた『素浪人月影兵庫』。
 まるで現代劇のようなセリフまわしで演じられる兵庫と焼津の半次の珍道中は、『俺は用心棒』の栗塚、左右田、島田トリオのクールで、ハードボイルドなタッチと好対照で、さらに、劇場の東映時代劇を思えば、この両作の現代的な息づかいは、目が覚めるほどだった。
 ラストに犯人を捕まえながら、護送する夜の高速道路を走るパトカーにかぶる哀しみを感じさせる音楽(バラード)、その『特別機動捜査隊』のエンディングのムードは、そのまま『特捜最前線』(77/テレビ朝日)にも引き継がれている。犯罪者を異常な人間と考えるより、“やむにやまれぬ犯罪”、“大都会や人間社会に起こるひずみの悲劇”という視点があって、正義感に燃えるヒーローではなく、その現実に眉をひそめ、哀しみの表情で戦うヒーローという独特の警察イメージを生み出していた。そして、それと並行して正反対ともいうべき、都会的ムードとアクションを散りばめた悪を粉砕する無国籍アクションの『キイハンター』。平然と中東の革命から大統領暗殺まで展開する物語は、日本作品というワクすら逸脱して、演じる丹波哲郎や千葉真一、野際陽子と一体化した素晴らしいキャラクター群像が躍動していた。
 そして、『新選組血風録』と『燃えよ剣』では、新選組が英雄でも、殺戮集団でもなく、血と肉でできた人間として描かれ、豪放で人がいい熱血漢の近藤勇、作戦家で自分の志に生きる土方歳三の生きざま……初めて生きた人間の物語として幕末の香りを僕らはかいだのだった……。
 仮面ライダーの自分の体が改造された怒りと哀しみ……本郷健史の気持ちは、手にとるように実感できた。
 こうして見ると、それぞれのキャラクターが実に手ごたえをもって立体化されていて、<人間の物語>という一貫した、作り手の姿勢を感じざるをえない。
 東映は、本来、スター・システムの映画を作る会社だが、テレビでは俳優は、そのキャラクターと一体化し、新しいキャラクターを次々と完成していった。東映テレビ作品の中で、息づいているキャラクターと物語。それは、まさにテレビ映画の古典として、僕たちの胸の中で、今日も生き続けているのだ。
(池田憲章)

初出 CBS・ソニー『栄光の東映テレビ映画 懐かしのテーマ大全集(19591970)』LP解説書 1987年(協力:中島紳介)*一部加筆修正