東映特撮の底力!『メガレンジャー』、『カブタック』

 日曜朝730分から830分までテレビ朝日系で放送中の東映TV作品『電磁戦隊メガレンジャー』と『ビーロボ・カブタック』がすばらしい盛りあがりをみせている。
 日曜朝のTVをみながら、子供たちと同時に特撮ファンも手に汗握ってしまうのだ。
 長年、東映特撮の現場を指揮してきた矢島信男特撮監督から若手の佛田洋特撮監督、デジタル・エフェクトを担当する尾上克郎氏に演出がゆだねられ、新しいデジタル合成とCG(コンピュータ・グラフィックス)映像とデジタルをフィルムに変換する映像システムを駆使して、東映特撮のビジュアル・エネルギーがパワー・アップしている。
 今、もっともおもしろく、刺激的な映像をTV特撮で生んでいるのは、東映特撮ではないのか。佛田洋、尾上克郎ふたりの特撮マンが今、何を考え、何に手応えを感じているのか。東映撮影所内の特撮研究所を訪ねて、その話を取材してみた。

佛田洋
計算性と偶然性をいかし、
画作りのおもしろさをひろげる

----佛田さんの中で、『メガレンジャー』、『カブタック』の演出の違いはありますか?
佛田 『メガレンジャー』は戦隊シリーズの明るく、はずんでるイメージをいかしつつ、リアルなカッコよさを狙うことかな。画にしていくことでのおもしろい特撮ですね。『カブタック』はマンガの世界なので、わざとセットも子供たちがみなれたニュータウン風にしたり、楽しさのある画作りが狙いです。
----デジタル合成やCGを東映特撮が手に入れたメリットはどうですか?
佛田 今までフィルムでは不可能だった映像をゆがめるとか、カメラを振ったり、ズームしたりする中へ合成したりとか、それはメリットですね。特撮研究所内にマッキントッシュの合成システムが作れたので、『メガレンジャー』や『カブタック』の変形、合体シーンは、ふんだんにCGとデジタルをミニチュア撮影と併用して、今までになかったスピード感やカット割りのおもしろさを考えました。
----スーパーギャラクシーメカの変形、合体シーンなんてTV観てて興奮しました。しかも、デジタルやCG一辺倒というわけじゃないですね。
佛田 全部ウチがCGになったら、よその会社と同じになってしまう。昨日も関係者の方から戦隊の合体はミニチュアの持ち味をいかして、CGオンリーはやめてほしい、と逆に言われましたから(笑)。前に師匠の矢島信男監督によく言われたのは、特撮は計算性と偶然性がある、ということ。計算ばかりやってコンテをがっちり作ってしまうと、現場のイメージを縛ってしまって伸びやかなシーンにならない。現場で偶然に撮れたカットがおもしろいと思ったなら、どんどん切りかえる。それは、実はデジタル合成やCGも同じで、ふくらみを抑えることもある。だからじゃないけど、特撮の画コンテは僕が描くけど、秒数は入れずに、デジタル合成の尾上さんや高橋キャメラマンのスタッフ打ち合わせの中でイメージを広げて、じゃ、これは宇宙背景の地球バックの一発撮り、ここはデジタル、ここは操演と画作りのおもしろさをひろげるようにやってますから。
----これから特撮はかなり変わりますか?
佛田 戦隊ものでも、必ずこのカットはこのアングルでとか、このロボットはこの技で、とかいう注文はスタッフから細かくはないんです。おもしろければ、喜んでもらえる。デジタル合成とミニチュアやCGを併用することで、今までやれなかった重量感とスピード感の緩急もできるようになってきた。ぜひ、今の東映特撮のビジュアルをみてもらいたいですね。(笑)。

尾上克郎
操演では撮れない合成イメージを
デジタルなら映像にできる

----デジタル合成はどういう撮影素材とシステムを使うんですか?
尾上 普通は35ミリ・フィルムで撮影するんですが、ウチは35ミリからスチール・カメラ、16ミリ、βカムのビデオとケース・バイ・ケースで使いわけてます。それをフィルムならスキャニングしてデジタル化、ビデオならうちでデジタル化して社内のマッキントッシュ・ベースのCG、合成システムを使って合成して、現像所の東映化工に持ち込んで、デジタル情報をフィルムに変換するシネ・オンのシステムでフィルムに焼き込むわけです。
----今は撮影所の特撮研究所内にマックの合成システムができたわけですね。
尾上 そうです。オペレーター兼アニメーターを養成して、社内でデジタル合成がやれるようになって、『メガレンジャー』や『カブタック』から僕がデジタル・エフェクトとしてデジタル合成を担当してるわけです。
----尾上さんはミニチュアを操作する操演出身ですが、そのメリットはありますか?
尾上 今までメカニックのミニチュアを山ほど撮ってきましたから、デジタル合成やCGの動きもそこから浮かないようにしてます。操演では撮れない合成イメージもデジタルなら映像にできる。今まで映像化できなかった佛田監督の画コンテもそのままやれるようになってきて、合体シーンとかもさらによくなってるんじゃないですか。
----『メガレンジャー』と『カブタック』のデジタル合成の演出の違いは?
尾上 『メガレンジャー』は、1カットのカッコよさでしょうか。何カットかにわけるんじゃなくて、インパクトのある1カットをいかに作るかです。『カブタック』はる意味でマンガの世界なので、シーン全体に出る楽しさを作れるかですね。スーパーチェンジの背景のCGもカエルなら水の泡とか、キャラにあわせてアニメのように楽しみながら一体、一体作ってます。両方とも考えるのは、おもしろい画作りともっと効果の出る撮影の新しい工夫ですね。
----デジタル合成の秒数はどうですか?
尾上 制限はないです。ただ、効果を考えて、短いのは12コマ(半秒)まで刈り込みます。2秒半だともう長いと思うから、使い方次第ですね。年末の正月映画の『北京原人』(97/監督:佐藤純彌)では、佛田特撮監督とデジタル合成も含めて、200カット以上も特撮を映画用に撮影中で、この映像のしあがりも今、楽しみなところです

【初出 ふゅーじょんぷろだくと『COMICBOX コミックボックス』Vol.106 1998年1月号】