円谷英二の映像世界〜『宇宙大戦争』

『宇宙大戦争』 昭和341959)年度作品 93分 カラー 東宝スコープ


 『宇宙大戦争』(59/監督:本多猪四郎)は、『地球防衛軍』(57/監督:本多猪四郎)の姉妹編ともいうべき作品である。地球を狙うナタール遊星人の円盤群と地球防衛軍のロケット部隊が宇宙空間に攻防戦を繰り広げる東宝最初の宇宙特撮。『地球防衛軍』とともに、本多演出の本編、円谷演出の特撮、伊福部昭の戦闘マーチが宇宙空間でのドッグ・ファイトに強烈なイメージを生み出した。
 宇宙空間に浮かぶ月の方向から3機の円盤が飛来するところから物語は始まる。
 地球の衛星軌道上に浮かぶ宇宙ステーションJSS3”“1965というテロップ。続くカットで、月方向から向かってくる3機の円盤……
 JSS3は、東京の宇宙科学センターに定時連絡中、またしても怪電波に妨害を受ける。しかも、今回は怪電波だけでなく、円盤が攻撃をしかけてきたのだ。
 JSS3の乗員は、慌ただしく迎撃態勢に入った。ステーションの上部から円盤に向け、光線弾が発射される。しかし、円盤に当たっても、バリヤーにはね返されてしまう。そして、円盤も強力な光線砲(冷却放射線)によりJSS3への攻撃を開始した!
 轟音がJSS3の内部に響き渡った。SOSが発信される中、JSS3は凍結状態となり、閃光を発して宇宙空間の中で大爆発する!!
 四散するJSS3の爆発光や相互の撃ち出す光線は、アニメーションで処理された。アニメの閃光の後、後にはわずかの破片しか残らなかったのである。そこにタイトル。リズミカルな音楽とともに、3機の円盤が悠々と宇宙空間を飛び続けるシーンが続く。
『宇宙大戦争』は、特撮ミニチュアとともに、本編の美術陣が大奮戦した作品としても優れている。湾曲しているJSS3の床面、網の目のようになったハシゴと、実にリアルな物であった。これはのちほど触れるスピップ号船内、そして、月面探検車、宇宙センター、宇宙服と、全編に発揮された。東宝初の宇宙物のため、美術陣も慎重に、この素材に取り組んだのであろう。
 その時、日本は夜であった。
 東海道線の上り急行が、深夜の闇を疾走していく。この列車は、すべてミニチュアで描かれる。メカニックの重量感を調整するためで、東宝特撮にとっては『ゴジラ』(54/監督:本多猪四郎)以来の手法である。
 鉄橋が円盤の光線で浮上、列車が川へと転落する、という描写が続いた。
 怪事件は、日本だけにとどまらなかった。パナマ運河では船が運河にのりあげ、ナポリでは急速に気温低下が起こり、河川の水が天空に逆流して噴きあがった……(このシーンは、写真風の作画で表現されている)。
 世界の異変を調べるため、日本の国際宇宙科学センターに全世界の科学者が集まり、その原因が協議された。そして、その結論は、地球外の生物による科学的な攻撃である、という驚くべきものであった。
 物体の温度を急速に低下させると、その物体の重力は減少し、地球自転の遠心力により舞いあがる。この原理を応用して、絶対零度の光線を照射、物体を冷却して無重力にする破壊兵器冷却線が撃ち込まれた結果なのだという。人類は、この外界からの侵略者に立ち向かう決心を固めた。
 そして、この冷却線を武器とする宇宙人に対する新兵器熱線砲が地球防衛軍の手によって、開発が成功していた。
 原子力R六〇〇を使用した熱線砲をテスト試射する勝宮一郎博士(池部良)。先端のパラボラ状の発射口から、強力な熱線(アニメーション)が照射され、試射場に並ぶ地球最強の金属であるスピップ号にも使用した合金板を撃ち抜いていく。
 しかし、宇宙人の魔手はこの会議場にも伸びていた。インドのアーメッド教授(ジョージ・ワイマン)が宇宙人に脳波コントロールされ、熱戦砲を奪おうとしたのだ。教授は捕まりそうになるや、勝宮の恋人・白石江津子(安西郷子)を人質に、「地球は、遊星ナタールの支配下になるのだ!」とうそぶく。
 追いつめられた教授は飛来した円盤に助けを求めるが、円盤は怪光線を照射、アーメッド教授の肉体を消滅、後には、人型の影と一片の金属板が残るだけであった。アーメッド教授は、この小さな金属板を頭に埋め込まれ、宇宙人の電波で操られていたのだ。
 もはや、一刻の猶予も許されなかった。かねてから、各国の協力で建造中であった原子力宇宙船スピップ一号艇スピップ二号艇をナタール人の基地と化している月面に打ちあげ、月攻撃敢行を決定したのである。
 搭乗員は、一号艇に日本の宇宙物理学の権威・安達博士(千田是也)を長として、勝宮、白石江津子、熱線銃の開発で活躍した岩村幸一(土屋嘉男)以下8名。二号艇は、アメリカのリチャードソン博士(レン・スタンフォード)を長とする外人科学者グループ、木暮技師(伊藤久哉)の8名で編成された。
 科学センター発進ポートにその勇姿を現す宇宙船・スピップ号。このシーンは、手前に開発準備で忙しい作業車や作業員を配し、広大な飛行ポートにそびえ立つ発進台にスピップ2艇というパノラミックな合成を駆使した構図で描かれ、ワイド画面ならではの特撮空間を生み出していた。

 出発前日、夜の東京にお別れを言おうと銀座に向け、スポーツカーを走らせる岩村を遊星ナタールの魔手が襲った。スクリーン・プロセスに青や赤の異様な光が走り、疾走する車。これはスクリーン・プロセスの暗さを逆利用し、不条理ともいうべきイメージ映像を作り出した。
 ナタール人の声が響く。
「止マランゾ。ソノママ、ジットシテイルノダ。苦シイカ……モウシバラクノシンボウダ。オ前ノ頭脳ノ中ニ我々ノ生命ヲ植エツケルノダ。オ前ハ今後、我々ガ電波デ命ジルママニ、行動シナケレバナラナイ。サァ、手術ハ終ワッタ。遊星ナタールノ新シイロボットヨ、サァ、行ケ、行ケ! 行ケ!」
 苦悶する土屋嘉男の表情が圧巻で、気づくと銀座にいて、こめかみからうっすらと血が流れているなど、本多監督のサスペンスあふれる演出が物語を盛りあげる。
 翌朝、青空にそびえるスピップ2艇の映像が、この岩村のロボット化シーンをさらに印象的なものにしている。
 地球の全希望を肩にスピップ号乗員は、それぞれの船に乗り込んでいく。2艇の搭乗員の乗る乗用車が、スピップ号がそびえ立つ発進ポートで、二手にわかれ、自分の船に向かっていくなど、合成画面を感じさせない、実にリアルな映像である。
 スピップ号は、縦に立っているため、操縦席は上を向いている。乗員が艇内の司令室に入ってくるシーンは、真上からカメラで下を見下ろし、ハッチが開くや、ハシゴで入ってくるなど、いかにも宇宙物というイメージである。この本編セットの充実が画面を支えるのだ。
 いよいよ発進。まず、手前のスピップ一号艇から発進する。噴射煙をあげ、画面内を上昇して消えていく一号艇。二号艇は、まだ噴射中で浮上していない。そして、一号艇の本編を挟み、同じ映像で二号艇がはるかにゆっくりと上昇していく。
 これは、二号艇が一号艇より奥にいるためで、そのスピードの違いで奥行きを出しているのだ。このシーンなどは、1カットですむところを、本編を挟むことで、2カットにしているわけで、これはのちの月面着陸もまるで同じで、手前に着陸してくる一号艇一号艇の本編一号艇の奥にゆっくりと降下、着陸してくる二号艇と、奥行きを生むと同時に、本編と特撮を有機的につなぐ典型的な円谷特撮のカット・ワークと言えるだろう。
 青空の中をぐんぐんと上昇していくスピップ号をカメラが上にパンしながら追いかける。これは『地球防衛軍』のマーカライト・ジャイロと同じで、吊り橋の下で実際の青空をバックにロケットを引っぱりあげていた。
 次のシーンでは、宇宙空間を進むスピップ号2艇が描かれる。大気圏脱出とともに、噴射を止め、慣性飛行に入る2艇。
 宇宙空間を進むスピップ2艇は、移動車にカメラをのせ、あるいはカメラを固定して撮影された。
 宇宙レーダーが始動され、船体の周囲にアンテナが突きだした。前方に星間物質があり、緊張する乗組員。しかし、それは敵ではなく、宇宙ステーションの残骸と宇宙に放り出されたステーションの犠牲者であった。スピップ号2艇の乗員は、心から冥福を祈った。凍りついたように宇宙を飛ぶ乗員(人形)。音楽が哀しい旋律を奏でる。
 出発後、72時間を経過、30万キロ定点を通過したが、なぜか今まで何の妨害もなかった。
 しかし、月より怪電波が発信され、岩村は苦痛に顔を歪め持ち場を離れた。その時、宇宙レーダーが前方に接近する物体を捉える。遊星ナタールの円盤が放った誘導兵器だ。600キロ彼方から超スピードで、2艇の航路上を突き進んでくる。スピップ号は、熱線砲の発射準備に入った。
 隕石状の宇宙魚雷だ。スピップ号2艇からジグザグ状の熱線が発射され、宇宙魚雷は次々と粉砕されていく。斜め前方から進むスピップ号を見る映像。光線を発射しながらスピップ号は前進する。一発で当たらず、二度、三度と宇宙魚雷の周りにはずれ、そして、命中して爆発するなど、メリハリのついた攻撃描写である。
 それでも、次々と飛来する宇宙魚雷。岩村はナタール人の指令を受け、熱線砲のエネルギー・バルブをしめ始める。岩村を介抱しに行った岡田隊員(桐野洋雄)は、岩村が狂ったようにバルブをしめているのを見て止めに入る。ふたりは格闘になり、その間、熱線砲の発射は不可能になる。
 一号艇の操縦室は大騒ぎだ。宇宙魚雷は、航路上を一直線に突き進んでくる。安達博士は、サイド・ロケットの噴射を命令、イスにしがみつく乗組員。サイド・ロケットが噴射、スーッと横に移動した宇宙船の元の位置を通過していく宇宙魚雷のショットなど、宇宙ならではの描写が光る。
 急激な移動で壁に叩きつけられる岩村と岡田。気絶した岩村を担ぎ、岡田は操縦室へとやってきた。岩村が動力炉を切っていたという話に驚く安達博士や勝宮。岩村に睡眠薬を注射して、耐圧室に閉じ込め、スピップ号2艇は予定を変更、月面への強行着陸を決定した。

 月面へ近づき、反転エンジンを始動するスピップ号2艇。上下の補助ロケット(光学合成で処理)で、180度転回、メイン・エンジンを下に降下していく2台の宇宙船。この反転イメージは、月世界探検物のSF映画の代表作であるジョージ・パルの『月世界征服』(50/監督:アーヴィング・ビシェル)の完璧なリメイクと言っていい。円谷英二のパルへのオマージュだったのだろうか。合成も実にきれいで、月面降下を実感させる。
 急降下していくスピップ号2艇。メイン・エンジン全開。超スピードが次第に弱まっていく。主翼から突きだしてくる着陸脚。
 スピップ一号艇、スピップ二号艇は次々と着陸した。
 自動防衛装置が入れられ、荒木隊員が一号艇の防衛任務に就き、岩村を残したまま全隊員が月面へと降り立った。それぞれの船体からおろされてくる月面探検車。
 月面探検車2台に分乗した安達博士たちは、ナタールの月面基地捜索へと向かう。前進する月面探検車。キャタピラで自走するミニチュア・モデルである。
 そのころ、耐圧室でイスの上にベルトで縛られていた岩村は、遊星ナタールの「オ前ハ宇宙艇ヲ爆破スルノダ」という指令を受け、脱出行動を開始する。前進する探検車は飛来する円盤を目撃、敵に気づかれぬように無線制限をしながら前進を続けた。計器を見て、ハッとする勝宮。風圧計が動いている----空気があるのだ。
 探検車はエアー・クッションを使用し、浮上して前進を開始する。巨大な山岳地帯も浮上して飛び抜けていく。2台で並んで飛ぶシーンが出色のイメージである。
 円盤が上空を何台も飛び、ナタールの基地が近くにあるのは明かであった。これ以上、探検車で行くのは危険だ。徒歩で前進する安達博士や勝宮たち。
 そのころ、イスから脱出した岩村は、荒木隊員を襲い、一号艇の爆破準備を進めていく。
 月面の岩石地帯を進む勝宮たち。この地上シーンは、実在の岩石地帯で撮られているが、ダークトーンで統一され、随所にふんだんに使用されている作画による月面描写の合成が月世界のイメージを生み出した。目立たないが作画の合成が画面に広がりを与えた、優れた合成シーンと言えるだろう。
 一行は、ナタール基地の排気口と思われる洞窟を発見、そこまで探検車を前進させ、洞窟の中へと入っていく。
 岩村は、一号艇の爆破準備を完了、二号艇へと向かう。
 洞窟を抜けると、眼下にナタールの月面基地が広がっていた。火口壁を巧みに利用した大円盤基地で、中央に半透明の材質で作られた半球型のドームがあり、その下には離陸体制の円盤群が並んでいた。脇の建物には、まだ未完成のものもある。一種の移動基地のようだが、叩くなら今がチャンスであった。
 勝宮は、潜入させてくれ、と進言するが、安達博士は許さなかった。熱線砲を運んでくるように命令、伝令として洞窟へ入った江津子と勝宮が宇宙人に遭遇するシーン、一号艇の爆破シーンが続いていく。
 安達博士たちに向けて、基地から声が響いてくる。接近は気づかれていたのか!?
 「地球人ヨ。警告ヲ無視シタカラニハ、モウ帰レンゾ。君タチハ、ワガ偉大ナル遊星ナタールノ奴隷ニナッテモラワネバナラン!」
 10秒地球時間の間に降伏しなければ攻撃する、というナタール基地。熱線砲を持った木暮隊員が間に合い、ついに安達博士たちは攻撃を開始した!
 崖の一角にあいた洞窟から照射される熱線ビームが基地に命中する。攻撃するナタール基地。基地から発射されたビームは崖をなめ、轟音をたてて岩が崩れ落ちる。
 この攻撃シーンが、本編と特撮を有機的につなぐ東宝特撮ならではのものである。
攻撃する熱線砲。
反撃する基地。
光線がなめて爆発する崖。
 崩れ落ちる岩石が目の前を落ちる中(抜群の反射光もうまい)、攻撃する本編の熱線砲。
 と、リズミカルに編集されていく。さらに、探検車を浮上させた勝宮が山の頂き越しに探検車の熱線砲で攻撃、基地が反撃すると、山の陰に隠れ、光線が走り、炸裂する山岳部といった光線砲の応酬を全編に流れる伊福部昭によるBGMのマーチが盛りあげる。
 ナタール基地は、猛攻撃に煙をあげて大破し、二号艇を爆破しようとしていた岩村は、ハッと我に返った。
 基地を大破させ、目的を半ば達成した安達博士たちは、地球への帰還を決意する。浮上する探検車(エアー・クッションの噴射は、このシーンでは霧を吹き出して見せている)。
 空気帯を抜け、月面上を進む探検車を追撃する円盤群----探検車と空中の円盤の戦いが始まる。次々と撃墜されていく円盤。2号車がキャタピラをやられ、一号車に全員乗り込み、スピップ号を目指す勝宮たち。
 ところが、一号艇が木っ端微塵になっているのを見て、愕然となる。自動防御装置を働かせていた以上、円盤の攻撃によるものではない……もしや岩村が! 二号艇に全員が乗り込み、探検車が引きあげられていく中、江津子が岩棚の上の岩村隊員を発見する。「岩村!」と叫ぶ勝宮。岩村は、スピップ号をひとりで守るつもりだったのだ。
「勝宮。一号機を爆破したのは俺だ。宇宙人のロボットにされたんだ。奴らは俺が食い止める。さぁ、早く出発しろ!!
 岩村隊員は、別れの言葉を叫び、携帯用熱線銃のエネルギーを最大にあげた。飛来する円盤と戦い続ける岩村----上昇していくスピップ二号艇。奮戦する岩村だが、円盤の怪光線を浴び、蒸発して消えていったのである……

 スピップ号が地球に帰還し、地球上は沸きかえった。やがて、飛来するであろうナタール遊星人を途中の宇宙空間で撃滅すべく、全世界の工業力を動員し、宇宙戦隊が作られることになる。試作中であった小型宇宙ロケットを急遽、有人戦闘ロケットに改造、来襲する円盤を要撃する作戦に乗り出した。
 続々と生み出される戦闘ロケット集団は、アメリカのテキサス平原に、ソ連のシベリア平原に、さらに、科学センター発進基地に次々と集結していった。
 そして、ついに遊星ナタールの円盤群が飛来する日がやってきた。
 戦闘ロケットの第一集団が発進していく。
 戦闘シェルターから次々と発進していくロケット群。そのころ、哨戒戦闘機隊長(野村浩三)が、宇宙航路A点で飛来する円盤群を発見した。防衛指令(高田稔)は、第二戦闘集団の発進を命じた。
 伊福部昭の戦闘マーチにのり、次々と発進していくシベリアと科学センターのロケット群。垂直に上昇していくロケット群の数がものすごい。地球をバックに、3機のロケット群が扇状になって、手前に突き抜けていく。
 この宇宙ロケット群とナタール遊星人の円盤群との宇宙戦がクライマックスとなる。
 左側から右上へと飛行する地球軍。右側から左へ向かう円盤群と、基本的な方向を決めつつ、画面を、光線を発射しながら超スピードで通り抜けていくロケットと円盤が、宇宙戦を実感させていく。事実、『スター・ウォーズ』(77/監督:ジョージ・ルーカス)の登場まで、これほど多数の宇宙戦闘機同士の宇宙戦というものは、世界のSF映像でも、この『宇宙大戦争』だけだったのではないだろうか?
 ジグザグ状の地球軍による光線、直線の円盤による光線と、光学合成の光線もきれいに整理されている。実物大の宇宙ロケットの操縦席とパイロットが映ると、バックの宇宙空間でも光線やロケット、円盤が乱れ飛ぶ。光線で粉砕される円盤、ロケット、飛来する宇宙魚雷と、一撃離脱戦法を基本イメージに、宇宙のドッグ・ファイトが続く。約420秒、東宝特撮の中でも、もっとも血湧き肉躍るメカニック戦のひとつである。
 ついに、円盤と大型円盤が地球に侵入した。東京に飛来する大型円盤は、そのドームから下の街に反重力光線を照射、木っ端微塵にビルが砕け、空中に吹きあげられていく。これは、発砲スチロール製のビルを圧搾空気の噴射で、噴き飛ばした。上空から見下ろしたロングの映像で、街が光線で緑に染まり、吹き飛んでいくところが迫真的である。
 科学センターは、強力な大型熱線砲を準備していた。小型円盤は、かすめただけで格納庫に向けて墜落。吹き飛ぶ格納庫。そして、大型円盤も大型熱線砲の攻撃を受け、バラバラに砕け散り、ナタール遊星人の宇宙侵略は、ここに防がれた。
『宇宙大戦争』は、『地球防衛軍』の一段上の大きなスケールを狙った宇宙SFだが、映画としての物語の密度は、やはり『地球防衛軍』に一歩譲る感がある。特撮は、宇宙艇の操演と合成、そして、光学合成の光線のフォルムのバラエティの豊富さ、スピードとタイミングのうまさが目をひいた。ジェット機戦のスケール・アップであるクライマックスの宇宙戦のスピード感も見事だったと思う。この宇宙ドッグ・ファイトは、円谷特撮の画面のコンテ・ワーク、構想力、編集のテクニックを知る最適なシーンであろうと思う。

初出 実業之日本社『円谷英二の映像世界』(竹内博、山本眞吾・編)円谷英二主要作品解説 昭和581983)年12月刊行】
*一部表記を変更し、訂正を加えました(管理人)