ウルトラセブンの世界

『ウルトラセブン』は、昭和421967)年10月から、昭和431968)年9月まで、1年間にわたって、円谷プロが製作した特撮SFテレビドラマである。
 この作品は、それまで『ウルトラQ』(66/TBS)、『ウルトラマン』(66/TBS)と続いた「ウルトラ」シリーズの3作目にあたり、それまでの作品にはなかった、新しい要素を取り入れたものとなっている。
 1980年代、うち続く宇宙からの侵略に対し、人類は、“地球防衛軍”を結成した。世界各地に支部があり、中でも日本の極東基地は、最高の軍事施設を誇る基地として知れわたっていた。“ウルトラ警備隊”とは、その極東基地の精鋭によって作られた特別部隊で、その警備隊のひとり、“モロボシ・ダン(諸星弾)”の本来の姿は、“ウルトラセブン”で、M78星雲人である。
 彼は、恒点観測のために太陽系を訪れ、侵略にさらされていた美しい星・地球を見て、守るために、とどまる決心をしたのだった。彼は、地球人に姿を変え、モロボシ・ダンと名乗り、ウルトラ警備隊に入隊していたのだ。彼は、地球防衛軍の手にあまる事件が起きるや、ウルトラセブンとなって、敢然とインベーダーに立ち向かうのだ!

『ウルトラセブン』とは、こういう物語である。毎回原則として、読み切りの形をとり、一回に一宇宙人の侵略を扱っている。SF的なストーリーとともに、その宇宙人の形態、能力、乗り物の宇宙船、侵略の仕方のバラエティさは、『ウルトラセブン』の大きな魅力であった。つまり、最高水準の特撮を駆使した視覚効果、練りに練ったストーリー、このふたつが『ウルトラセブン』を支えた大きな柱であり、魅力だったのである。

 この一冊は、その『ウルトラセブン』をストーリー面から再構成し、その全貌を掴んでもらう意図をもって作られた。
 便宜上、全49話を、この本では四部にわけて、構成してある。

1
1話「姿なき挑戦者」〜第15話「ウルトラ警備隊西へ 後編」
『セブン』のストーリーのパターンは、ほとんどこの初期の作品に出尽くしている。人間たちを誘拐し、調査する宇宙人、海獣を連れて、地球を侵略しに宇宙人、正統派の凶悪な侵略宇宙人、侵略意志がないにもかかわらず、地球人と対立してしまう宇宙人、地球が逆に相手を侵略してしまうようなパターンなどなど……。
 基本設定編、といってもよく、『ウルトラセブン』の骨格は、ここで作られた。

2
16話「闇に光る目」〜第25話「零下140度の対決」
 展開編に入り、第1部の基本設定を活用して、ストーリーにバリエーションを加えている。正体不明の地底ロボットを交えて語られるセブン誕生の秘密(第17話『地底 GO!GO!GO!』監督:円谷一、特殊技術:大木淳)、疑似空間で人間を捕獲するベル星人(第18話『空間X脱出』同・前)、地球の核を形成する物質を狙うシャプレー星人(第20話『地震源Xを倒せ』監督:野長瀬三摩地、特殊技術:的場徹)、超能力者を交えたことで、俄然おもしろくなった(第23話「明日を捜せ」同・前)、まるで、遊びにきたような無敵のポール星人(第25話『零下140度の対決』監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)などなど、『セブン』が多種多様な話に思えるのは、この展開以降のためである。

3
26話「超兵器R1号」〜第36話「必殺の0.1秒」
 展開編がさらに進み、ストーリーのバリエーションばかりでなく、キャラクターを中核においた作品が多くなってくる。
 ダンが宇宙人の視点を持つことを明確に印象づけた、第26話「超兵器R1号」(監督:鈴木俊継、特殊技術:的場徹)、アマギ隊員物語の第28話「700キロを突っ走れ!」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)と第31話「悪魔の住む花」(監督:鈴木俊継、特殊技術:的場徹)、ソガが活躍する「必殺の0.1秒」(監督:野長瀬三摩地、特殊秘術:的場徹)、孤独な青年の物語、第29話「ひとりぼっちの宇宙人」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)などなど、登場人物に深みが加わるとともに、次の第4期への布石ができあがる。

4
37話「盗まれたウルトラ・アイ」〜第49話「史上最大の侵略 後編」
 いろいろな意味で、『ウルトラセブン』の物語世界が完成しようとしている時期。123部のすべての要素がここで結実し、“ウルトラ・アイ”を盗む、というお決まりのパターンでありながら、キャラクター、テーマにおいて結晶化ともいうべき力量を見せた、第37話「盗まれたウルトラ・アイ」(監督:鈴木俊継、高野宏一)、正攻法中の正攻法、第3940話「セブン暗殺計画 前編 後編」(監督:飯島敏宏、特殊技術:高野宏一)、第4849話「史上最大の侵略 前編 後編」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)、傑作佳作の続出した3週間、第42話「ノンマルトの使者」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)、第43話「第四惑星の悪夢」(監督:実相寺昭雄、特殊技術:高野宏一)、第45話「円盤が来た」(同・前)。疲れか、凡作も何本かあるが、ここにあらゆる意味で、『ウルトラセブン』は完成する。

 一本、一本のストーリーを重視しつつ、全体をひとつの話として、『ウルトラセブン』とは、どのような世界であったかが、どのように盛りあがっていったか、それを考えてみたくて、このような構成をとってみた。
 もちろん、この世界を彩る地球防衛軍やウルトラ警備隊、宇宙人、特撮シーンにも誌面はさいてあり、この構成も各部から12本ずつカラーで、誌上VTRを行い、各部の特徴が明確にわかるようにしてある。

 本書を見ていただければわかるが、『ウルトラセブン』は、多数のスタッフの参加が、テーマの深化にまで成功した希有の一例である。
 全体像としての『ウルトラセブン』を理解していただければ幸いである。

初出 朝日ソノラマ・ファンタスティックコレクションNo.11ウルトラセブン フィルム・ストーリー・ブック SFヒーローのすばらしき世界』(監修/円谷プロダクション) 昭和541979)年1月刊行】
*満田監督の名前は、正しくは禾に斉。