裏話『ウルトラ7(セブン)』

1 プロジェクト・エフェクト

 特撮に頼らず、おもしろい映画効果が出せないものか、本編側の監督も、いろいろと考え、撮影に取り組んだ。
 野長瀬三摩地監督組の第19話「プロジェクト・ブルー」(特殊技術:的場徹)の鏡の中にセブンが入り、追いかけて入ろうとしたアンヌが鏡にぶつかる、というシーンで、おもしろい方法が使われ、画面効果をあげていた。大きな写真バックを使い、ガラスを立て、あちら側にアンヌ隊員をおき、こちら側を吹き替えにして、両方近づかせて、ぶつかるところだけ本物の鏡にした、というもので、あちら側にセブンもいるので、異様な画面感覚に仕上がっている。はじめてセブンが鏡に入るシーンでは、水を使って、手が鏡の中に入っていく、という効果をあげた。監督のイメージとしては、フランス映画の『オルフェ』(50/監督:ジャン・コクトー)があった、ということである。

2 応募の怪獣

 第41話「水中からの挑戦」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)に出てくる怪獣“テペト”、第42話「ノンマルトの使者」(前同)に出てくる怪獣“ガイロス”は、円谷英二特技監督や美術監督の成田亨らが審査員にとなって募集した宇宙人デザイン・コンテストの入選作であった。
 デザインのアイデアがなかったのではなく、作品の人気を高めるための視聴者参加の役割を持つコンテストだったが、約3万人、10万点の応募作を集め、充分その役割を果たした、といえるであろう。

3 700キロを突っ走れ!」

 第28話「700キロを突っ走れ!」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)に登場する高性能爆薬“スパイナー”は、『帰ってきたウルトラマン』(71/TBS)の第5話「二大怪獣東京を襲撃」(監督:富田義治、特殊技術:高野宏一)でも、シリーズを飛び越えて使用された。“ツインテール”、“グドン”を倒すためで、東京都民を避難させるが、ウルトラマンとMATの活躍で、使用されずに怪獣を倒すことができた。
『ウルトラQ』(66/TBS)の怪獣ロボット“ガラモン”の電子頭脳をおおっている“チルソナイト”も、この『ウルトラセブン』(67/TBS)の第2話「緑の恐怖」(監督:野長瀬三摩地、特殊技術:高野宏一)で、“チルソナイト808”と名前を変えて登場した。
 この隠れた遊びに気づいたウルトラファンは大喜び……。

4 スーパーロボットの秘密

 第1415話「ウルトラ警備隊西へ」(監督:満田かずほ、特殊技術:高野宏一)に出てくるスーパーロボット“キングジョー”は、当初のアイデアでは、たくさんの部分品が蜂の大群のように襲ってきて、何が何だかわからいうちに、最後に合体して、巨大な一体のロボットになる、というものであった。しかし、実際にミニチュアでこれをリアルに撮影するのは困難であり、検討を重ねた結果、画面で見るような四体の合体ロボットとして、作品に登場した。
 これは、当然の話だけれど、合体するミニチュアと、キングジョーはまるっきり別物であり、使いわけによって、効果をあげていた。不気味な機械音が、このスーパーロボットの魅力だ。

5 英語版『ウルトラセブン』

 ハワイで放送された英語版は、なかなかの名訳だった。最終日は以下のような具合。
DAN
 I have to go home soon, ANNE.
 If you see a shooting star in the west
  at the dawn, it’s me heading home far, far away.
  Goodbye ANNE. 
ANNE
 Wait, DAN! Don’t go!
 外国向けのレコードも出てたりして、セブン国際化の日も近い。

6 ダンの透視力

 モロボシ・ダンには、物を透視することができる超能力が備わっている。
 当初、野長瀬監督の制作第2話「緑の恐怖」では、目全体が白く発光する方法がとられたが、円谷英二、一監督たちの意見で、気味が悪いので、ほかの表現をすることになり、以降、透視力のシーンでは、目の中に光が十字に光る表現を用いた。少しでも、楽しく、おもしろく、気持ちがいい作品を。それが『ウルトラセブン』の制作姿勢であった。

7 主題歌物語

『ウルトラセブン』の第1話をはじめて見た時の興奮は、いまだに憶えている。第1話「姿なき挑戦者」(監督:円谷一、特殊技術:高野宏一)という題名、ドラマチックなオープニングの曲にのって、画面に現れる地球防衛軍マークの上の監修 円谷英二……のってるな! と思わず感じた程であった。
 さて、この東京一(円谷一監督のペン・ネーム)作詞、冬木透作曲の主題歌だが、実はこの歌が作られる前に同じ作詞、作曲のスタッフで、別の主題歌が作られていた----それも譜面だけでなく、ちゃんと演奏、録音されていたのだ。
 ホルンを多用したブラス演奏風の軽快な曲で、完成度の高い作品である。ただ、あまりに軽快すぎたため、セブンのイメージにあわない、とクレームがつき、NGになったのである。しかし、作品中、第4話「マックス号応答せよ」(監督:満田かずほ、特殊技術:有川貞昌)や第36話「必殺の0.1秒」(監督:野長瀬三摩地、特殊技術:高野宏一)の星人とセブンの闘いの場面で使用され、画面効果を高めていた。
『セブン』の主題歌・BGM作曲の冬木透氏は、昭和101935)年313日、満州に生まれた。国立音大作曲科を卒業し、高田三郎、市場幸介両氏に師事した。オルガン曲『黙示録による5つのモテット』などを作曲するかたわら、『ウルトラセブン』、『ウルトラマンレオ』(74/TBS)などの音楽を担当していた。現在、桐朋学園大、桐朋女子校の講師である。
 実相寺作品や最終回で多用されるクラシック風の音楽も実はある部分はまぎれもなく氏のオリジナル作品だった、という----
『ウルトラセブン』の主題歌、ウルトラ警備隊の歌、戦いのマーチなどのBGM、冬木音楽抜きで、『ウルトラセブン』を語ることはできないのではないだろうか。

初出 朝日ソノラマ・ファンタスティックコレクションNo.11ウルトラセブン フィルム・ストーリー・ブック SFヒーローのすばらしき世界』(監修/円谷プロダクション) 昭和541979)年1月刊行】
*満田監督の名前は、正しくは禾に斉。