特撮新世紀の予感に満ちた 1998年日本特撮

1999展望
国内


収穫は『ダイナ』と『ガイア』の充実!!


 1998年夏、日本SF大会は、前年の最優秀SF映像として、『ウルトラマンティガ』に星雲賞を贈った。優れた作品を曇りなき眼で見つめてくれる若きSFファンたちに、特撮ファンとして感無量の思いだ。
 1998年の日本特撮は、『ウルトラマンダイナ』と『ウルトラマンガイア』の充実の一語に尽きる、と思う。
『ウルトラマンダイナ』の最終章3部作の特に残り2話は、アスカの「オレは今、君だけを守りたい!」というリョウへの想いを縦軸に、人としてさまざまな想い、夢を込めた最後の戦いを描いた。ヒビキの、コウダの、ナカジマ、カリヤ、リョウコ、マイ、アスカのセリフに込めたエモーションは、『ティガ』の子供たちがティガとともに、戦う映像イメージに対する新たな解答で、リョウの「君だけを守りたいなんて……正義の味方のセリフじゃないわよ」というセリフにアスカが語る「かもな。でもオレはオレだから……(ガクッとヒザをつくアスカを抱きしめ、頬を寄せるリョウ)……リョウ」(心の琴線を表すピアノのメロディーの美しさよ!)、まっすぐにアスカの瞳を見つめるマイに、「マイ、ダイナなんてカッコいい名前つけてくれてサンキュ。けっこう気に入ってたんだぜ」と、陽気に語りかけるアスカ、「ダイナミックのダイナだよ。ダイナマイトのダイナ……そして、大好きなダイナ」と、マイ、「ありがとな、マイ……」というセリフの美しさ、「カズマ、見てるか、おまえの息子だ!」という地球でアスカを見送る人々の想い……特撮作品は、ドラマが生きた時こそ光り輝くのだと実感させてくれた。
『ウルトラマンガイア』は、GUARDとXIGのメカニック特撮も、もちろん楽しいが、ガイアとアグルのまるでライオン丸とタイガー・ジョーかという熱いドラマを描き、第14話「反宇宙からの挑戦」(監督:根本実樹、特技監督:佐川和夫)、第15話「雨がやんだら」(監督・特技監督:北浦嗣巳)、第16話「アグル誕生」(同前)、第17話「天の影 地の光」(監督・特技監督:村石宏實)、第18話「アグル対ガイア」(同前)の本編と特撮が核融合して発動を開始したドラマティックさにTVの前で、椅子から何度も転げ落ちるうれしさだった。
『ウルトラマンガイア』が手中にしつつあるガイアとアグルに表情さえ感じる特撮ヒーローのドラマティック・スパーク、変身シーンの光がまさに我夢の、藤宮の想いだという光さえ演技させようとしている特撮スタッフの踏み込みの正しさ、そして、石室コマンダーや堤チーフ、梶尾チーム・ライトニング・リーダーの我夢が目撃する戦う大人のプロフェッショナル・マインドの手応え。チーム・ハーキュリーズの吉田リーダー、チーム・マーリンの今井隊員、チーム・シーガルの神山リーダーの落ち着いた、いかにも大人らしいセリフまわしも見事だ。かつて、本多猪四郎監督が語っていた「本当の軍隊の参謀や指揮官らは、フランクでどんな時も気さくに話せる人だ。そうでなければ、いい作戦も浮かばないからね」という言葉を思い出した。わずか1クール13話で作品の全貌が見えてくるなど「ウルトラ」シリーズはじまって以来、初の快走ぶりといっていいんじゃないか!!
 セット手前に平屋+樹木の街並みのセットを建て、マルチ効果のようにウルトラマンVS怪獣の戦いに奥行きを出す撮影設計も、夜間シーンですばらしい広がりを見せはじめており、平成「ガメラ」シリーズが見せた建物ナメの構図をさらに一歩押し進めた革命的なアイデアで、さすがは佐川和夫特技監督だった。『ウルトラマンティガ』(96/TBS)から進めてきた本編と特撮班をひとりの演出家が担当するシステムも村石宏實監督の第10話「ロック・ファイト」、北浦嗣巳監督の第1516話「雨がやんだら」、「アグル誕生」の3本を見た時、手に汗にぎるドラマティックさと軽快なカット・ワークを手中にしていて、TVシリーズを見て、演出家を感じる幸せを満喫することができた。
「ロック・ファイト」など、チーム・ライトニングやチーム・ハーキュリーズ、チーム・クロウのXIG全スカイ・チームが大空へ向かうシーンで、画面奥のエリアルベースから1カットのタテの構図を使って、3チーム別々の角度の飛行ラインで、画面手前に突き抜けていく最高の飛行シーンを見せ、佐橋俊彦作曲の音楽もカッコいいの一語で、この回はビデオですぐ3回も見直して、興奮してしまった。
 あの作品のチーム・クロウの彼女たちや堤チームの「チーム・クロウには、男性のチームではできない女性らしい任務があるはずだ、と考えていた……しかし、そういう時代でもないようだな。どうもオレは古い人間らしい」というセリフをエンディングの中で見せていく軽快さは、重要だと思う。
 あの作品の弾むような我夢の表情やカッティング、音楽、リズム感の中に、何か20年旋回できるような新しいセンスを感じるのだ。
 小中千昭、長谷川圭一、武上純希、太田愛、川上英幸、古悠田健志ほかの脚本スタッフの想いは、本編監督の村石、北浦、原田昌樹、根本実樹という監督陣がドラマの中に昇華し、佐川和夫、高橋敏幸ら特撮スタッフがまさに人としての想いにあふれた肉弾アクションと何年ぶりかという光線技の冴えを見せるエネルギー・アタックを完成させていて、デジタル合成のパワーでここ何年か先行されていた感のある、東映の佛田洋、尾上克郎コンビの「戦隊」シリーズの特撮アクションのビジュアル映像に、まさに追いついたといっていいと思う。
『ウルトラQ』(66/TBS)、『ウルトラマン』(66/TBS)、『ウルトラセブン』(67/TBS)から熱狂して「ウルトラ」シリーズを見てきた世代としては、はっきり書いておきたいのだが、『ウルトラマンガイア』をもう脚本の金城哲夫や上原正三、市川森一を比較ポイントとしてあげて論じるアプローチをやめようじゃないか! 『ウルトラマンガイア』は、新しい何かだ、21世紀より早く特撮TV世界に新世紀を呼ぶ新しいスピリッツを持ったスタッフの生んだオリジナル世界だ。
『ウルトラセブン』や『帰ってきたウルトラマン』(71/TBS)に引き寄せるべきではないと痛感する。
 毎週土曜日、家へ帰ってビデオを見るのが楽しくてしょうがない。かつての少年時代と同じように、『今日は何を見せてくれるか?』というドキドキ感でいっぱいなのだ。

さらに、新たな可能性を求めて!!


 ただ、読者にぜひお話ししたいのは、現場の苦闘だ。年末、北浦嗣巳監督にお話を聞いたのだが、2話を9日間で撮影、9日間で仕上げ作業で、デジタル編集していくわけだ。
 本編と特撮を兼任する演出家の疲労度は、想像するにあまりあり、「1516話よかったっすね」と話しても、「本当!? そんなこと、はじめていわれたよ」と、謙遜されてしまった。今くらいドラマが走りはじめると、特技監督が別人でも、本編監督の熱さが伝染して、特撮がエモーショナルにカット数が増えていくのはいうまでもない。ただごとじゃないプレッシャーと思う。自分が信じるドラマティックさをフィルムに結晶させる手応え、その模索、そして、孤独感と全スタッフを率いる不安感、充実感がその表情に見え隠れした。
 円谷プロの製作スタッフには、ぜひこの撮影現場をバック・アップし、予算的、時間的、人的スケジュールを増強してやってほしい。
 バンダイと各スポンサー、そして、毎日放送にお願いしたいのは、『仮面ライダー』(71/MBS)が2年続けたように、この空前の特撮ヒーロー番組をビジネスマンの高度な視点(今、このスタッフは買いデスよ!)で、さらに利益を生み出すため、踏み込んでほしい。今後、20年間食べられる映像作品のドアが開くのが、『ガイア』だと、あえていい切ってしまいたい。
 XIGが全滅して(メンバーを殺す必要はないです)、全世界のアルケミスターズがGUARDと合流して、新たなNEO-GURARDを結成、キャストの一部を変更して、『ウルトラマンガイアⅡ』とかいって、この世界観とキャラクター集団のさらなるドラマ空間を手中にすれば、『新スタートレック』(87)の成功も夢じゃないと思うのだ。バンダイも一年間一作のバブル・ヒーロー設計を修正してもビジネス的に成立できるという考え方に、一度はなってもいいんじゃないか?
 この先、『ウルトラマンガイア』がどうなるか知らないが、重要な突破口がそこに見えていることを確信する。
 1999年は、日本特撮界にとって、大きな実りの年となるだろう。あの作品を見て、東映の高寺、日笠、小嶋プロデューサーや、佛田洋、尾上克郎特撮コンビがファイトを、特撮魂を燃やさぬわけがない。期待してるぜ!
 円谷映像のドラマティックな演出陣(上野勝仁、高橋巌、清水厚)のオリジナル・アイデアの魅力をなぜTV局やビデオ会社のプロデューサーは、気づかないのか(先日、チラとアイデアを聞かせてもらって腰が抜ける抜群さに仰天した。スゴイんだぜ〜)。ビデオでも絶対売れると思うんだけど、彼らの動向も気になる。まさに、特撮新世紀の予感を感じた一年だった。日本特撮を今こそ、見逃すな!

初出 朝日ソノラマ・宇宙船別冊『宇宙船 The Year Book 19991999年刊行】