「池田憲章のわくわく怪獣ランド」第7話

後ろ姿が絵になるいかす怪獣(やつ)!!

 仲間うちで、年に一回やっている“特撮ベスト10”の季節がまたやってきて、「カッコいいデザインの怪獣」というアンケートをみつめながら、いろいろな怪獣の勇姿を思い浮かべた。このベスト10は、ビデオを編集して2時間分のベスト10テープを作って、皆でお酒を飲みながらそれをみる、という酔狂企画で、いい加減に選ぶと、本当にカッコいいかどうかを映像でみられてしまう……こいつは悩んだ。
 そして、僕の結論は、やはりと言えばいいのか、ベスト1が“ゴジラ”であった。
 ゴジラのどこがすごいか。前からみてよし、斜め前がまたよし、横からみてよし、斜め後ろからみてまた抜群のカッコよさ、そして、後ろからみても長い尻尾と背びれがつける表情……とほとんど全角度、どこからみても絵になるのである。こんな怪獣は、世界でも類例がない!
 これは、なぜか。実は、アニメ雑誌の編集をした時、気づいたことなのだが、ロボット2体が対決しているシーンを描いてもらうと、一体のロボットの顔は、まずみえなくなってしまう。ところが、ゴジラは爬虫類なので、口は耳まで裂けてるし、目は顔の側面についている----かなり斜め後ろでも表情のある顔がみえるのだ(これは、実はウルトラマンも同じなのだ。“爬虫類みたいな顔”と言われるのもよくわかる)。さらに、ゴジラの場合、そびえたつ分厚い背びれと長い尾が表情をつけ加える。昔、イラストレーターの開田裕治さんが東宝のイベント用にゴジラのTシャツにイラストを描いたのだが、これも後ろ姿のゴジラで、背びれと少し振り向き加減の表情がすばらしいイラストだった。後ろ姿のほうが絵になってしまう怪獣----こんな渋い怪獣はそうはいない。
 ゴジラには、初代の幽鬼のように燃える闇の東京に立つ映像、パワフルな『キングコング対ゴジラ』のエネルギッシュな動き、放射能火炎を吐く際、光る背びれの超イメージ映像……と、世界の怪獣王のひとりと言われるのも無理はないのである。
 ♪親しき友と酒飲みながら、ワイワイ怪獣ベスト10をみる。また楽しからずや!!

初出 徳間書店『SFadventure1988年7月号】